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『マルクス:生を吞み込む資本主義』(読書メモ)

白井聡『マルクス:生を吞み込む資本主義』講談社現代新書

『共産党宣言』は面白かったが、『資本論』を読む根性はないので、本書を買ってみた。

一番印象に残ったは、「資本とは価値増殖の無限運動である」(p.102)という点。

つまり、「資本主義社会は生産力を不断に増大させることを運命づけられた社会なのだ」(p. 28)

著者の白井先生いわく「人間社会から生まれたにもかかわらず、人間の意図や欲望とは別のロジックで作用し、したがって人間の手に負えないものとなる、それが資本である」(p. 97)

マルクスが言うように、人間は「自分が呼び出した地下の悪魔をもう使いこなせなくなった魔法使い」(『共産党宣言』p. 50)状態である。

本書の後半では、「包摂(subsumption)」という概念が説明されるのだが、これが怖い。

賃金労働者は、職場において生産性向上を目指す絶えざる競争に巻き込まれる(包摂される)だけでなく、職場外においても、より便利で快適な生活を目指す消費活動に駆り立てられており(包摂されており)、それは資本主義社会の構造によるものなのだ。

一見、職場において働き甲斐を感じ、稼いだお金でいろいろなものを買って幸せに暮らしてしているつもりでいても、実は、資本主義という仕組みに踊らされているといえる。

研究の世界においても、学術雑誌の影響力指標である「インパクトファクター」や「引用数」といった数値によって論文が商品化されていて、それを巡る競争が世界中で展開されているので、おもいっきり資本主義によって包摂されている

ただ、「包摂されている」ことに気づいているかいないかは大きな差である。

資本主義による競争を無視して働くことは難しいけれども、その仕組みを知り「巻き込まれすぎない」ことは大事だと思った。

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