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『幽霊たち』(読書メモ)

ポール・オースター(柴田元幸訳)『幽霊たち』新潮文庫

ニューヨーク三部作の第二作である。

私立探偵のブルーは、ホワイトという男から、ブラックという男を毎日見張るように依頼されるものの、何も起こらない。徐々にいら立つブルーは、ブラックの正体を暴こうと行動に出るが・・・。

まるで阿部公房の前衛小説を読んでいるような気になった。

ストーリーが謎すぎてよくわからない作品であるが、ヘンリー・ソローの『ウォールデン』を引用する場面が印象的である。

「たしかメモを取っておいたはずだ。我々は我々の真の居場所にはいない、これだこれだ。我々は偽りの場にいる。人間としての本来的な弱さゆえ、我々は檻(おり)を夢想し、自分をその中に閉じ込める。したがって我々は同時に二つの檻の中にいるのであり、そこから抜け出すのも二重に難しい。なるほどその通りだ、とブルーは思う」(p. 74)

この箇所は響いた。

自分の作った檻から出られない自分。

多くの人がその状態にあるような気がした。



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