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『吉田松陰』(読書メモ)

池田諭『吉田松陰』大和書房

1968年に書かれた吉田松陰論であり、「名著復刊」として出版されたもの。松陰の思想や人生が詳細に語られている。

吉田松陰は、日本という国を愛した思想家・実践家である。自らが変革者であり、多くの変革者を育てた。その根底には「兵学者」としての戦略がある、という点が興味深い。

印象に残ったのは、松陰が「弟子の強み」を伸ばそうとしたこと。

例えば、「頑固で強引な性格」を持つ高杉晋作の育て方。先輩である桂小五郎は、晋作の頑質を「そのために他人の言葉をきかなくなるのではないか」と心配していたという(p. 146)。

しかし、松陰は次のように考えていた。

「僕はこれまで高杉の頑質について、高杉の語ることはもちろん、その頑質を矯正しようとしたことはない。その頑質を矯(た)めようとすれば、人間は中途半端になるばかりか、むしろ、後日、大事業をなすにぜひとも必要な意志力を育てないことになる。高杉は、十年後こそ、大をなす人間である」(p. 147)

そして、親しみやすいタイプの久坂玄瑞と切磋琢磨させることで、晋作の頑固さをポジティブな方向へと育てていく。

一流の教育者は、学習者の「強み」を伸ばす、ということがわかった。


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