goo

『フィガロの結婚』(読書メモ)

ボオマルシェエ(辰野隆訳)『フィガロの結婚』岩波文庫

伯爵家で召使をしているフィガロとシュザンヌは結婚することになるが、初夜権(女性の召使が結婚するときに主人が初夜を過ごす権利)を行使しようとするアルマヴィヴァ伯爵。そうはさせないように策略をめぐらすフィガロとその仲間たちの物語である。

フィガロは、小さいときに親と分かれ、怪しい人たちの中で育ち、さまざまな職業を転々としてきた渡世人。とにかく頭の回転が速く、世渡り上手である。

自尊心が高いフィガロだが、実は、自分というものがわからない。第5幕第3場の長セリフが心に響いた。

「さては、持てあましているこの俺自身がそもそも何者だ。為体(えたい)も知れぬがらくたの、とりとめもない寄せ集めだ。かてて加えて、阿呆らしいけちな野郎だ。(中略)とうとう、夢も望みも破れて砕けて幻滅の男となり果てた…幻滅の男と!シュゾン、シュゾン、シュゾン!」(p.198)

自信満々に見えたフィガロなのだが、やはり愛するシュザンヌ(シュゾン)がいてこそ、自分という存在を確かめられるのだ。

パートナーの存在が、個人のアイデンティティを支えているのかもしれない。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )