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精神、物体、神

「わたしは考える、ゆえにわたしは存在する」という真理を、哲学の第一原理として定めたデカルトは、次のように述べている。

「ただわたしが考えることをやめるだけで、仮にかつて想像したすべての他のものが真であったとしても、わたしが存在したと信じるいかなる理由も無くなる。これらのことからわたしは、次のことを知った。わたしは一つの実体であり、その本質ないし本性は考えるということだけにあって、存在するためにどんな場所も要せず、いかなる物質的なものにも依存しない、と」(p.47)

たしかにその通りである。

どんな状況にあっても、考えている限り、人間は人間として存在する。

次に強調されているのは神の存在である。

「自分よりも完全である何かを考えることをわたしはいったいどこから学んだのかを探求しようと思った。そしてそれは、現実にわたしより完全なある本性から学んだにちがいない、と明証的に知った。(中略)その本性はしかも、わたしが考えうるあらゆる完全性をそれ自体のうちに具えている、つまり一言でいえば神である本性だ」(p.48-49)

精神と物体の二元論を打ち立てたデカルトだが、同時に神をその根本に置いている点はあまり知られていないように思った。

出所:デカルト(谷川多佳子訳)『方法序説』(岩波文庫)


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