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『風立ちぬ』(読書メモ)

堀辰雄『風立ちぬ』ハルキ文庫

肺病の彼女につきそい、八ヶ岳のサナトリウムで暮らす主人公。堀辰雄の実体験に基づくリアルな作品である。

どこか自己中心的な理想の愛を求める前半より、彼女が亡くなった後に、一人山で暮らす後半の記述がすばらしい。

「そうしてはあはあと息を切らしながら、おもわずヴェランダの床板に腰を下ろしていると、そのとき不意とそんなむしゃくしゃした私に寄り添ってくるお前が感じられた。が、私はそれにも知らん顔をして、ぼんやりと頬杖をついていた。そのくせ、そういうお前をこれまでになく生き生きと―まるでお前の手が私の肩にさわってはいましまいかと思われるくらい、生き生きと感じながら……」(p.97)

病から死、そして再生の物語を堪能した。
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