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人間の両面性

『シェイクスピア』の著者、河合祥一郎氏によれば、「賢い阿呆」や「無知の知」といった矛盾した表現を「オクシロモン」と呼ぶらしい。「オクシ」は「賢い」、「モロン」は「愚か」を意味するギリシャ語とのこと((p.135)

このオクシロモンがシェイクスピア劇には多用される。

例えば、「きれいは汚い、汚いはきれい。」(マクベス第1幕第一場)

なぜか?

「これは『マクベス』の冒頭で魔女たちが繰り返すせりふだ。すばらしいと思えることでも、見方を変えてみると道徳的に忌まわしいところがあったり、こうだと認識されるものが実はまったく違った実体をもっていたりするというこの劇のテーマに深く関わっている」(p.136)

この箇所を読み、たしかに人間世界には、見方を変えると良く見えたり悪く見えたりするものがあることに気づいた。シェイクスピアは、そうした人間が持つ両面性を演劇を通して伝えたかったのかもしれない。

出所:河合祥一郎『シェイクスピア』(中公新書)
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