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器の大きさ

『やしのみ酒』のインパクトがあまりに強かったので、また書きたい。

この本を読んでびっくりしたのは「です・ます調」と「だ・である調」が混在しているところ。解説の多和田葉子さんも次のようにコメントしている。

「読み始めてすぐ快い衝撃を受けた。「だった」と「ですます」が混在した凸凹な文体。日本語が制服を脱ぎ捨てて、走り始める。こんな日本語もあるんだ、という驚き。原書が英語なのだということに改めて気づき、さらに強い驚きを感じた。つまり、作者が日本語の「だった」と「ですます」を混ぜたわけではなくて、原典の英語の中にすでに何かそれにあたる特色があって、訳者がそれを日本語に置き換えて考えて再演出したということになる」(p.225-226)

たしかに、チュツオーラもすごいが、訳した土屋哲さんもすごい。その土屋さんは次のように述べている。

「その文体と言語の点で、チュツオーラほど物議をかもし出した作家は少ない。その意表をついた珍奇さに、魅了される者もいれば、大体において教育をうけたナイジェリア人からは、あんなカタコト英語が、破格の、でたらめ文法で語られることは、アフリカ人自身の能力の低さを示す、アフリカ人の恥だとする、国辱論まで出る始末である」(p.196-197)

物語の内容だけでなく、言葉までもオリジナルな、チュツオーラの器の大きさを感じた。

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