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『哀れな人々』

『貧しい人々』の訳者である安岡治子さんの解説を読んでいたら、次のような箇所があった。

「「貧しい(ペードヌィ)」という形容詞は、英語のpoorと同様、「哀れな、可哀想な」という意味ももつ。従ってこの小説のタイトルは、「哀れな人々」とも読めるのである。」(p.314)

貧困にあえぐ中で若い女性に恋をしたマカールと、金持ちと結婚せざるをえなくなったワーレンカ。多少意味は違うが、両人とも「哀れな人々」である。あるいは、不遇な人々、気の毒な人々、やりきれない人々、ともいえるかもしれない。

われわれの人生には、多かれ少なかれ、何らかの「やりきれなさ」が存在する。ドストエフスキーの『貧しい人々』は、たしかに、そうした「人生の切なさ」を描いた小説であった。

出所:ドストエフスキー(安岡治子訳)『貧しい人々』(光文社古典新訳文庫)
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