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『日本でいちばん小さな出版社』(読書メモ)

佃由美子『日本でいちばん小さな出版社』晶文社

ひょんなことから出版社「アニカ」を始めることになった佃さん。右も左もわからない状態から、印刷所、取次、書店との付き合い方を学んでいくプロセスが描かれている。

本書は、自分の仕事のことをブログに書いていたのが編集者の目にとまったことから生まれたらしい。題名の通り、佃さん一人で切り盛りしている会社だからこそ、辛さもある反面、マイペースで仕事ができるのだろう。

僕はずっと本を書く側だったが、本を出す側の苦労がよくわかった。

ところで、出版社として最もつらいのは何か?

それは、返品である。売れない本の束がどんどん事務所を占拠していき、裁断処分しなければならなくなる。せっかく作った本を捨てなければいけないのはつらい。

逆に、喜びの瞬間は何か?

「それにしても、注文短冊を一枚一枚本に挟むときが一番の至福のときだ。この瞬間のために、本を作ったり消しゴム作戦をしたり(注:返品本の表紙をきれいにすること)、暑くても寒くてもバイクを走らせているとさえ言える。自分で作った本なので愛着があって、客注なんて書いてあると、そのお客さんにお礼のメッセージを送りたいくらいだ」(p.200)

たとえベストセラーにならなくても、自分の作ったものが誰かに読まれて、感動を与えることができるとしたら、これ以上の幸せはないであろう。

肩肘張らずに、自然体で成長していくストーリーを読むうちに、「こんなふうに仕事がしたいな」と感じた。

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