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『達成の人』(読書メモ)

植松三十里『達成の人:二宮金次郎早春録』中公文庫

二宮金次郎といえば、薪(?)を背負いながら本を読んでいる像を思い出す。さすがに、僕が通っていた小学校にはなかったが、日本人が見習うべき立派な人として知られている。

本書は、その金次郎の若い頃を描いた小説。しかし、読んでいてとても複雑な気持ちになった。なぜなら、彼がモーレツなビジネスパーソンそのものだからだ。

金次郎の座右の銘は「積小為大」。小を積んで大を為す。つまり、小さな節約が集まれば、大きな節約になる、ということ。とにかく、節約節約でムダを省きコストを削減する。この精神で、借金に苦しむ武家や藩を立て直していくのだ。

しかし、あまりにもモーレツに働きすぎて家に帰らなかったため、(1番目の)奥さんに逃げられてしまう。このへんも日本人っぽい。

凄い人だとは思うけれども「こうはなりたくないな」と思ってしまった。

ただ、印象に残った言葉もある。それは、金次郎のお父さんが息子に伝えた「三樹の教え」という中国の故事。

「一年間の計画を立てるのなら、穀物を植えればいい。十年間の計画なら、木を植えればいい。一生の計画を立てるなら、人を育てればいい」(p.43)

この言葉を胸に、金次郎は人材育成に力を入れるようになる。人を育てるということは、人生と深いつながりがある、ということを感じた。


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