goo blog サービス終了のお知らせ 

ラーニング・ラボ

松尾睦のブログです。書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。

仕事の意味を考える

2015年02月11日 | 組織・職場の学習
先日、ジョブアサインメント(仕事の割りあて)について、企業の方々と話す機会があった。

どんな仕事に取り組むかで、その人の成長が左右される。できれば、各メンバーの成長につながる「適度に難しい」仕事をアサイン(割り振り)したい。しかし、なかなか丁度良い仕事がないケースも多い。

そんなときに必要なのは「仕事の意味」を説明することじゃないか、という話になった。

その仕事が持つ「全社における位置づけ」「他部門への影響」「生み出す価値」など、マネジャーがしっかりと説明すると同時に、メンバーと議論して意味や意義を見いだすことができれば、仕事へのコミットメントも高まるはずである。

何げなく取り組んでいる仕事の意味を、職場全体で見つめ直す機会を持つことの大切さを感じた。




考えてから走ること

2015年01月16日 | 組織・職場の学習
エドガー・アラン・ポーは、小説を書く際に「型」を持っていたらしい。

訳者の小川高義さんいわく

「一口に言えば、理詰めの芸術派なのだ。目標ははっきりしている。ある効果に的を絞って、読者の心を強烈に打つ。そうであれば作品として出来がよい。その効果が高いのは「恐怖」である。(中略)あらかじめ計算したとおりに読まれたがっている。そんなタイプであるならば、推理小説の元祖と目されるようになったのも肯けることだろう」(p.196-197)

小説家には、はじめから筋を考えて書く人と、書きながら筋を考える人がいるらしい。

これは小説以外でも言えることである。

ちなみに自分は、走りながら考えるタイプであるが、50歳を超えてからは、考えてから走ることの大切さを痛感している。

出所:ポー(小川高義訳)『黒猫/モルグ街の殺人』光文社





行為の前の内省

2014年12月19日 | 組織・職場の学習
キヤノンでは、1999年から、CKI活動と呼ばれるホワイトカラーの生産性向上を目的とした活動が行われている。(ちなみに、この活動は、インパクト・メソッドという手法をベースにキヤノン流にアレンジしたものである)

この活動で着目したいのは、仕事やプロジェクトを始める前に、徹底的に議論して、起こりうるべき問題を事前に検討することを重視している点だ。キヤノンでは、これを「フロントローディング」と呼んでいる。

経営学者のドナルド・ショーンは、内省を「行為の中の内省」と「行為の後の内省」に分けているが、キヤノンのフロントローディングの話を聞いて、「行為の前の内省」というものがあるのではないかと思った。

つまり、内省(リフレクション)とは、振り返るばかりでなく、仕事をする前に「先を読んでおく」ことも重要なのだ。

「行為の前の内省」→「行為の中の内省」→「行為の後の内省」がつながるとき、学びも深くなる、と言えるではないか。

出所:桑江曜子, 北川聡, 前島克好 (2011) 「ドラッカー思想の実践例としてのCKI ホワイトカラーの生産性向上を目指して」,ドラッカー学会年報, Vol. 6, p.88-103. 



半生をリフレクションに費やす

2014年11月28日 | 組織・職場の学習
宮本武蔵が実戦で戦ったのは、若いときだけである

「武蔵は二十代でその生涯のおもな勝負をしとげたが、三十代になると兵法というもののおそろしさを知った。そのおそろしさをどう克服すべきかということが彼の三十代以降の課題になるのだが、それほどに考えているかれからみれば、生兵法の剣客が軽々に勝負、試合ということばを吐くのが、殺してやりたいほどに腹だたしかったにちがいない」(p.42-43)

ということは、10~20代の実践を「リフレクション」していたのが30代以降ということになる。

13歳で有馬喜兵衛という兵法者を打ち殺し、62才で亡くなった武蔵。

ほぼ半生をリフレクションに費やし、そこから武蔵流の哲学をひねり出したのは凄いことだな、と思った。

出所:司馬遼太郎『宮本武蔵』朝日文庫



共有・共感

2014年10月24日 | 組織・職場の学習
先日紹介した『フラニーとズーイ』では、妹のフラニーと兄のズーイの会話が、延々とすれ違う。

なぜか?

それは、ズーイがフラニーを「説得」しようとしていたからである。

説得モードが続く限り、なかなかわかりあえない。

しかし、遂にわかりあえる時がくる。

なぜか?

それは、ズーイとフラニーの「共通体験」により、お互いが「共感」できたからである。

いかに相手と「共有・共感」できるか。そこに相互理解のポイントがあるように思った。


理を尽くして教える

2014年09月26日 | 組織・職場の学習
先日紹介した『天の梯』の中に、料理人である主人公・澪が、見習いの少女・ふきに教える場面がある。

包丁加減で大切なのは、食べ易いように切る、ということなの。食べ易さのひとつの目安は、ひと口で食べられるかどうか、ということ。固い物を食べるひと口と、柔らかいものを食べるひと口とは、同じではないのよ」(p.57)

これを聞いた板前の政吉が感心して次のように言う。

「澪さんの教え方は丁寧だ。そうやって理を尽くして教わりゃあ、ふき坊だって決して忘れねぇだろう」(p.58)

日本人は「背中を見て覚えろ」という指導が好きな人が多いように思う。たしかに、他人をよく観察して自分で盗み取ること自体は学習効果が高い。しかし、「理を尽くして教える」ことも合わせると、より効果的であるような気がした。

このときに気をつけなければならないのは、上の人が教えることで、本人が考えなくなったり、受け身になってしまう危険性だ。理を尽くして教えると同時に、さらに深く考えさせる指導が必要になると思った。

出所:高田郁『天の梯』ハルキ文庫


円熟の研究

2014年09月09日 | 組織・職場の学習
先日、生涯発達の本を読んでいたところ、「エイジングにはいくつかの意味がある」ことがわかった。

まず「加齢」、つぎに「老化」や「高齢化」、そして「熟成、円熟」である。

加齢、老化、高齢化などは「衰えていく」というネガティブな意味合いが強いが、熟成、円熟は「成長」につながるポジティブなニュアンスを持つ言葉である。

「歳を重ねるにしたがい、人はいかに成長するか」に着目する「円熟の研究」は、今後大切なテーマになるのではないか、と感じた。

出所:堀薫夫『生涯発達と生涯学習』ミネルヴァ書房

「チェック型」と「対話型」の振り返り

2014年09月03日 | 組織・職場の学習
先日、某研究会にて管理会計の先生から、業務の振り返りやレビューには2タイプあることを教えてもらった。

第1のものは、「診断的」振り返りであり、あらかじめ設定した目標と現実にギャップがあれば、それを是正するものである。要は「チェック型」の振り返りといえるだろう。

もう一つは、「インターラクティブ型」の振り返りであり、現場の意見やアイデアを吸い上げて、新しい戦略につなげるものである。これは「対話型」の振り返りと言えそうだ。

「チェック型」の振り返りは重要だが、それだけだと学びが少ないように思う。「チェック型」と「対話型」を組み合わせることで、学習する組織を作ることができるのではないか、と感じた。


感謝する力を磨く

2014年08月29日 | 組織・職場の学習
先日読んだ『目を閉じて心開いて』から。

著者の三宮さんは、ある少女のエピソードを引用し、次のように述べている。

「カナダだったか、重病に苦しむ少女が毎日「きょうのよかった探し」をして過ごしていたという話を聞いたことがある。そうやって、彼女は病気や運命を恨んだり人に頼ったりすることなく、自分の心を自身の力で健康にたもち、たとえ病気であってもいま生きていることに感謝し続けたのである。言うは易いが、このような状況で同じ気持ちを持続できるかと聞かれたら、私は言葉を失うだろう。だがしかし、嬉しいときに感謝するよりも、このように苦しく希望の光も感じられない暗闇の中でこそ、感謝する力が磨かれ、感謝する気持ちは宝石のごとく輝きをもってくるのではないだろうか」(p.133)

「感謝する力」という言葉が響いた。感謝する力は、もともと備わっているものというよりも、磨き育てていくべき力なのだろう。

出所:三宮麻由子『目を閉じて心開いて』岩波ジュニア新書