goo blog サービス終了のお知らせ 

ラーニング・ラボ

松尾睦のブログです。書籍、映画ならびに聖書の言葉などについて書いています。

頼るリーダーシップ

2013年03月06日 | 組織・職場の学習
先日、ある宴会の席で、某病院の院長先生の隣になったとき、「病院をまとめていくコツは何ですか?」と聞いたところ、次のような回答が返ってきた。

頼ることですかね

これをやれ、あれをやれと命令するのではなく「君が頼りなんだ」と期待するということらしい。たしかに、期待されたり、頼られたりするとやる気になる。

院長先生は続けておっしゃった。

「特に看護師さんたちとうまくやっていくことが大事です。ライオンの群れと同じですよ。ライオンの雌が獲物を捕ってきてくれないと、雄は生きていけないでしょ。病院も医師だけ頑張っていてもダメで、看護師さんの協力がないと良い医療が提供できませんね」

ライオンの例えがわかりやすかった。「頼るリーダーシップ」は、結構大事かもしれない、と思った。




育成を後押しする「ランチ作戦」

2013年02月26日 | 組織・職場の学習
ビジネスパーソンとして成長するキッカケとなった経験の一つに「他部門や外部組織と連携した経験」がある。会社としては、こうした経験を増やすことで、人材育成を後押しすることができるのだ。

では、どうやって連携の経験を増やすのか?

いろいろと企業事例を調べてみると、「一緒にゴハンを食べる機会」を作ることで連携を促進している企業が目立つ。

例えば、ネットマーケティング事業を手がけるセプテーニグループでは、成長スピードにともなって社内のつながりが弱くなることを危惧し、年齢、役職、部署の異なる社員同士の交流機会を増やすために「ランチ作戦」を打ち出している。

具体的には、ランチ代は会社が持ち、日頃の業務では関わりが薄い異なる部門のメンバーやマネジャーが4人一組となって昼食を共にするイベントや、社員が話をしてみたい役員やマネジャーを逆指名しランチに行くイベントを実施ししている。

一緒にメシを食うというのが、連携の基本なようだ。

出所:日経ビジネス2013年1月28日号p.75

徒弟制 vs 短期育成

2013年02月06日 | 組織・職場の学習
一人前の寿司職人になるには「飯炊き3年、握り8年」と、10年以上の修行が必要となるらしい。

そのすし職人を2ヶ月で養成してしまおうというのが「東京すしアカデミー」である。ちなみに受講料は83万円(1年コースは150万円)。日本だけでなく世界から生徒が集まっているようだ。

代表の福江誠氏は、経営コンサルタントとして寿司店を支援しているうちに、「今の徒弟制度だけでは、寿司職人がいなくなってしまう」と感じ、10年前このアカデミーを立ち上げた。

筋金入りのすし職人に「1ヶ月で誰でも寿司を握れるようにできませんか」と問うたところ「握るだけならできるでしょう。基本だけ集中して教えれば」という答えがあり、設立の決意を固めた福江さん。

従来の徒弟制度は「職人世界を身体で感じさせ、職人としての心構えや姿勢を教育してから握らせる」というアプローチであるのに対し、すしアカデミーは「とりあえず握れるようになってから、現場において、職人として一人前になる」というアプローチなのだろう。とりあえず握れるようになってから、そのレベルで止まるか、もっと上のレベルになるかは、本人の意欲や職場の指導次第である。

短期間に人を育成するプログラムを作るには、人が育つためのエッセンスを考え抜かねばならない。暗黙的だった知識やスキルは、わかりやすく言葉で説明することが求められる。

そういう意味では、短期育成に取り組むことは、教える力を高めるし、自分たちのノウハウを明示化して、技術を保存し伝承する体制を整えることにもつながる。

日本では「短期育成」をバカにする風潮があるが、やり方次第では徒弟制を超えることもできるかもしれない、と感じた。

出所:日経ビジネス2013年1月7日号p.78-81.



失われた情熱

2013年01月29日 | 組織・職場の学習
日経ビジネス2013年1月21日号の「ソニー:情熱を取り戻せるか」という記事を読んだ。その中で平井社長は次のように言っている。

「残念なことですが、ソニー社員が、自分たちの商品に対する情熱や思い入れが薄れてきているな、と感じています。会社が大きくなったからかもしれませんが、自社の商品、サービス、コンテンツに対してやっぱりプライドを持ってほしい」(p.55)

このような状況はソニーだけに限らず、日本企業全体に言えることではないかと思った。リストラで人々が去り、自分もいつクビを切られるかわからない。行き過ぎた成果主義で職場の雰囲気はすさんでしまった。このような中で、情熱を持って仕事をすることのほうが難しいような気がする。

では、そうすれば情熱を取り戻せるのか。

「働きがいのある会社調査」を主催するGreat Place to Workによれば、働きがいは
1)経営者・管理職に対する「信頼
2)職場における「連帯感
3)仕事に対する「誇り
によって構成される。

これら3要因の因果関係についてはよくわからないが、信頼→連帯感→誇り(情熱)というつながりがあるような気がする。もしそうだとすると、仕事に対する情熱や誇りを取り戻すためには、経営者に対する信頼や職場の連帯感を高める必要がある。

前にも書いたが、経営再建中のりそなの社員の方が「経営者が自分たちのことも考えてくれていると感じたときから、社内のモチベーションが上がった」とおっしゃっていたのを思い出した。

経営者の社員への愛が情熱を取り戻す鍵なのかもしれない。




10打数1安打

2012年11月27日 | 組織・職場の学習
デジタルメモ「ポメラ」やスマートフォン対応のメモ帳「ショットノート」をヒットさせたキングジム社長の宮本彰氏は、自社の開発のあり方を「10打数1安打」と呼ぶ。

「宮本がよく言う言葉に「10打数1安打」がある。独創的なヒット商品は9回はずれても10回目に当てれば十分お釣りがくる。だから自分は失敗した人を責めない。むしろなぜ売れなかったか、笑いながら分析したり、指摘し合ったりして次に生かす社風が大事なんだ。こう力説する」(p.91)

失敗を許容する文化とよく言うが、どこまで失敗が許されるのかが曖昧である。その点「10打数1安打」はわかりやすい。また、なぜ売れなかったかを、悲壮感を漂わせずに、気楽に議論することができるかどうか。これが革新的組織の特性であるように感じた。

出所:日経ビジネス2012年11月26日号


『方丈記』(読書メモ)

2012年11月12日 | 組織・職場の学習
鴨長明(梁瀬一雄訳注)『方丈記』角川ソフィア文庫

表紙の写真がきれいだったのと、現代語訳がついていたので買ってみた。

京都郊外に、四畳半ほどの家(なんと組み立て式で移動可能)を建てた長明は、そこで、人生のはかなさ、わびしさを語る。

解説によれば、下賀茂神社の禰宜だった人の次男であり、歌人としても活躍した長明だが、本書全体に、厭世的な考え方が満ちている。例えば、友人関係についての次の一文。

「いったい、人間の友人関係にあるものは、財産のある人を大切にし、表面的に愛想のよいものとまず親しくなるのだ。必ずしも、友情のあるものとか、すなおな性格なものとかを愛するわけではない。そんなことなら、人間の友人なんか作らずに、ただ、音楽や季節の風物を友とした方がましだろう。」(p.111)

ひとりぼっちだった長明が想像できた。

また、この頃、京都では火事やら地震やら竜巻が発生して多くの人が死んでいたらしい。郊外に小さな家を建てたことについて長明はつぎのように語る。

「やどかりは、小さい貝を好むものだ。これは事のある時の危険を知っているからだ。みさごは、荒磯に住みついている。それは、人間の近づくのを恐れるためだ。私もまた、やどかりやみさごと同じ。都に住むことのあやうさを知り、世の中のつまらぬことを知っているから、世俗の望みをいだかず、あくせくしない。ただ、静かなくらしを大切にし、苦労のないのを楽しみにしているのだ」(p.110)

今の世の中で長明のような生活をすることは難しい。しかし、本書をよむことで、世の中にずっぽりとはまっている自分に気づいた。

ときに、一歩下がって、自分の生き方を客観的に眺めることも必要かもしれない。







4%の変革リーダー

2012年09月25日 | 組織・職場の学習
りそなホールディングを立て直した細谷英二会長は、変革リーダーの育成について次のように語っている。

「機能する組織は「2:6:2」と言われることがよくありますね。いわゆる優秀な社員が2割、普通の社員が6割、そのほか2割でも組織がちゃんと回りますよと。しかし、私は変革のリーダーはそうたくさんいなくても組織が変わると見ています。いわゆる優秀な社員の2割の中からさらに2割のリーダーを選び出すのです。要は、社員の全体の4%に変革を志向する「鬼」がいれば、組織は絶対に変わると信じています」(p.88)

りそなには、この4%を育てるために、後継者推薦制度、社内マネジメントスクール、新任役員勉強会、疑似役員会、1日COO研修、上級役員研修プログラムなど、さまざまな育成システムがあるという。

実績のある会長さんが言う4%という数字には信ぴょう性がある。ただ、この4%のリーダーを支えるリーダー達、そして彼らについていくメンバーの育成も大切であるような気がした。

出所:日経ビジネス2012年9月24日号p.86-89.


一介の坑夫

2012年09月21日 | 組織・職場の学習
西田幾多郎さんは、死ぬ寸前まで執筆の意欲を失わなかったらしい。リューマチで床に伏せている中でも次のような手紙を書き送っていたという。

「どうも手、特に足の神経麻痺直らず。何所にも出ることができず・・・・無聊の日を送って居ます。唯思想はいくらでも湧出する様におもわれ、これだけは書き残して置きたいとおもい居ります」(p.35)

身体は衰えても、わきでてくる思想を言葉にしていった西田さん。『西田幾多郎:生きるととと哲学』の著者である藤田正勝さんは、以下のように解説している。

「思想家には、ただひたすらに鉱脈を探し、それを掘りつづけるタイプの思想家と、掘り出された鉱石を研磨したり、整理・分類したりするタイプの思想家がいる。(中略)西田はまちがいなく前者のタイプに属する思想家であった」(p.36)

西田さんもそれを自覚して、自身について次のように語っている。

「哲学は体系の構成を目的とせなければならないことは云うまでもない。私もそれを目的とせないのではない。唯力及ばざるのである。私はいつまでも一介の坑夫である」(p.36)

この部分を読み、自分も、興味関心のまま鉱脈を掘り続ける坑夫でありたい、と感じた。

出所:藤田正勝『西田幾多郎:生きるととと哲学』岩波新書



手本、しつけ、仕事愛

2012年09月14日 | 組織・職場の学習
オイゲン・ヘルゲル氏は、著書『弓と禅』の中で、日本的芸術における徒弟制について述べている。

まず基本的な教授法。

師の演技と模範に対して弟子が自分をうちこみこれを模倣すること― これが指導の基本的関係である」(p.73)

ということは、職場には必ず模範となる手本となる人がいなくてはならないことになる。

次に、弟子の姿勢。

「日本の弟子は三つのことを身につけてくる。善いしつけと、自分の選んだ芸術に対する情熱的な愛と、師に対する批判ぬきの尊敬とである」(p.73)

特に1番目と2番目が大切だと思った。組織においても「最初のしつけ」と「仕事に対する愛」がなければ、よい仕事はできない。

手本、しつけ、仕事愛。この3つは、学びを促す職場の特徴だといえる。


人権

2012年07月20日 | 組織・職場の学習
理学療法士の三好さんは、介護における「人権」のとらえ方に異議を唱えている。

「人権を声高に言う人たちは、ていねいな言葉遣いをしましょうとかいって、「三好様」なんて呼んだりしますけど、はっきり言って気持ち悪い。(中略)特に一般の人というのは、老人のことを知らないから、老人を大事にするというと、プライバシーを大事にするか、言葉遣いをていねいにするか、消費者として大事にしましょうというくらいしか、思い浮かばないのでしょう。でも、それは違います。ていねいな言葉遣いができる人よりも、便秘で苦しんでいる目の前のばあさんをどうやって助けてあげられるのかという、その技術を持っている人が一番人権を大事にしているんです。オムツを当てられて、「三好様」なんて呼ばれるより、トイレでちゃんと排泄させてくれたほうがいいに決まっています」(p.58-59)

これは介護の現場にかかわらず、医療や教育の現場などでも当てはまることだろう。その人が人間らしく生きていくことをサポートできるかどうか。そこに人権を大事にする鍵があると感じた。

出所:三好春樹『ウンコ・シッコの介護学』雲母書房