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『方丈記』(読書メモ)

鴨長明(梁瀬一雄訳注)『方丈記』角川ソフィア文庫

表紙の写真がきれいだったのと、現代語訳がついていたので買ってみた。

京都郊外に、四畳半ほどの家(なんと組み立て式で移動可能)を建てた長明は、そこで、人生のはかなさ、わびしさを語る。

解説によれば、下賀茂神社の禰宜だった人の次男であり、歌人としても活躍した長明だが、本書全体に、厭世的な考え方が満ちている。例えば、友人関係についての次の一文。

「いったい、人間の友人関係にあるものは、財産のある人を大切にし、表面的に愛想のよいものとまず親しくなるのだ。必ずしも、友情のあるものとか、すなおな性格なものとかを愛するわけではない。そんなことなら、人間の友人なんか作らずに、ただ、音楽や季節の風物を友とした方がましだろう。」(p.111)

ひとりぼっちだった長明が想像できた。

また、この頃、京都では火事やら地震やら竜巻が発生して多くの人が死んでいたらしい。郊外に小さな家を建てたことについて長明はつぎのように語る。

「やどかりは、小さい貝を好むものだ。これは事のある時の危険を知っているからだ。みさごは、荒磯に住みついている。それは、人間の近づくのを恐れるためだ。私もまた、やどかりやみさごと同じ。都に住むことのあやうさを知り、世の中のつまらぬことを知っているから、世俗の望みをいだかず、あくせくしない。ただ、静かなくらしを大切にし、苦労のないのを楽しみにしているのだ」(p.110)

今の世の中で長明のような生活をすることは難しい。しかし、本書をよむことで、世の中にずっぽりとはまっている自分に気づいた。

ときに、一歩下がって、自分の生き方を客観的に眺めることも必要かもしれない。






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