拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

千人を歌うプライが一瞬桐谷健太に見えた件

2019-07-06 10:01:47 | 音楽
バーンスタインの「千人」の指揮がなぜ小節の途中で4つ振りから8つ振りに変わるかというと、それはテンポの伸縮が激しいからである(そういえば、この春に歌ったドイツ・レクイエムのテンポも相当動いたっけ)。特に小節の終わりの方になると、ねと~っと粘着する。指揮台の上で飛び跳ねるバーンスタインだが、私が持つバーンスタインのイメージは「粘着質」。「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲の粘着具合もかなりのものである。決してきらいなわけではない。それでもクラリネットのイメージトレーニングとして聴く音素材としては不適当である(テンポの揺れは音だけではわかりにくい)。なのになぜバーンスタインを聴くか(観るか)というと、歌手がいいから。特に、第2部で、冒頭からしばらく沈鬱な音楽が続いた後、霧が晴れたように、満を持してバリトンが「Ewiger Wonnebrand(永遠の歓喜の炎)」と歌うところ、これを歌っているのはヘルマン・プライ。これ以上美声のバリトンがいるだろうか。モーツァルトとロッシーニの二つのフィガロで有名なものだからなんだか三枚目な感じのプライであるが、ここでは後光がさすほど高貴である。と、思いながら、一瞬、「まんぷく」の世良さん(桐谷健太)とみまごうた。因みに私がサントリーホールのオープニング記念で聴いた「千人」のバリトンはベルント・ヴァイクル。ちょうど新婚だったルチア・ポップとペーター・ザイフェルトの間に座ってて、第1部と第2部の間、新婚の二人がヴァイクルの頭越しに目で合図を送りあうのをうっとうしそうに見ていたのが印象的であった。