拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

ステッラの太もも

2015-06-17 06:37:51 | 音楽
アントニエッタ・ステッラ(日本風に言うと「星アントニエッタ」)は、第1回のNHKイタリアオペラ(1956年)で来日したのだけれど、気に入らないことがあって、1日歌っただけで帰っちまったんだと。その1日がこないだ記事にした、シミオナートと共演したアイーダ。で、その一部の映像が残っているのだ。ありがたやー。その一部の映像からでも馬力のすごさは垣間見られるが、ステッラは第4回んときもきて、このときの「西部の女」は全曲の映像が残ってる。圧巻なのは第2幕の幕切れ。保安官とポーカーで賭をするシーン、ミニー(ステッラ)は保安官の一瞬の隙をついて、スカートをめくって(!)、ストッキングにカードを隠す。このとき、一瞬だが太ももが露わになって、どきっとする。もし、私が高校生で(実際は4歳)、会場でこれを生で見たなら、どきどきしてその後の音楽は耳に入らなかったかもしれない。いや、しかしすごい声だ。この幕切れ、シ♭をきえーっと伸ばす合間に「ガハハハハ」と笑う(この笑い声もスコアに音符で書いてある)。この高音と笑い声の落差のすごいこと。ところで、ステッラと言えばこんなこともあった。後年、FMで、評論家が集まってNHKイタリアオペラの思い出話をしてたときのこと。年輩の偉そうな人(以下「長老格」という)が「第3回で初めて大歌手(テバルディ)が来た」と言ったのに対し、若手の評論家が「(第1回で来た)ステッラは大歌手ですよ」と言ったら、長老格がむっとして「私が言ってるのは(この言い方が偉そう)、カラスやテバルディのような大歌手のことだ」。私、この長老の発言が「ロマネ・コンティ以外はワインじゃない」と言うような、とても権威主義的な感じに聞こえた。私は、若手氏に一票。