(大山蓮華が咲き出しました)
令和4年5月4日(みどりの日)に初風炉の茶事へお招きいただきました。
ご亭主は暁庵社中のT氏、不肖暁庵が正客、相客はT氏の茶友S氏でした。
T氏から小間の茶室があることを伺ったので、持てる環境を生かして家庭茶事をぜひ・・と勧めました。
待合の部屋がないとのことで、「茶花を育てている屋上庭園を待合にしてみてはどうかしら?」と提案してみると、すぐに「その方向で考えてみます」というご返事があり、お招きを楽しみに待っていました。
それで、この度のお招きがとても嬉しく、「風薫るみどりの茶事」と名付けてお礼の手紙(抜粋)を忘備録として記します。(茶事の写真が無いのでみどりをイメージする写真を貼り付けました)
Tさまへ
風薫るみどりの日に初風炉の茶事にお招きいただき、誠にありがとうございました!
数日経ちましたが、茶事のあれこれが浮かんでは消え、消えては浮かび、しばらく余韻を楽しむことにします・・・。
ワクワクしながら初めて東京のご自宅を訪れましたが、茶室(1階)、リビングの待合(2階)、屋上の露地、蹲、腰掛待合という変化にとんだ茶事空間が新鮮で心に残りました。
1ヶ月前のメールに「創意工夫していますが、時間が無くって・・・」とありましたが、障子や壁紙の張替え、屋上のタイル取り替えなどをご自身でされたと伺い、大いに納得した次第です。
ご心配頂いた(実は私も内心心配だった・・・)屋上への階段は両手で身体をカバーでき、快適に上り下りすることができました。
屋上の腰掛待合ではT氏の愛情が感じられる茶花や草木を鑑賞しながら、爽やかな風が心地よく吹き渡り、屋上庭園をお勧めしてヨカッタと思いました。相客S氏が「Tさん、凄い! 丹精の茶花が素晴らしい!」を連発していたのも大いに頷けます。
二畳中板の落ち着いた茶室の床に掛けられた「無 有花有月有楼台」のお軸は、宋代の詩人・蘇東坡の漢詩に由来していると伺い、「何もない中でも花や月や酒を酌み交わす楼台があれば、これに勝るものはない」・・・・ご亭主様の茶事への思いが伝わってまいります。
何もないと言いながら、「無」の中にこれまでの茶の湯の遍歴がしのばれるお道具の一つ一つに魅せられ、さりげない中にもお好みのセンスがステキでした。
初風炉の炭手前を拝見し、阿弥陀堂釜や繊細なカンに心惹かれ、古材香合に廬舎那仏を拝みました。小間の座掃きが新鮮で軽やかで、何度も拝見したい・・・と。
銅鑼の音に導かれて後入りすると、壁床の鉈籠に生けられた姫射干、立波草、京鹿子が目に飛び込んできました。はっと息を呑むほど清々しく爽やかで、初風炉の妙を味わいました。
心を込めて練られたまろやかな濃茶(雲門の昔、一保堂)を大好きな一入の黒茶碗で頂戴し、地元・菓子店の柔らかな金団「岩根躑躅」、そして粽や都鳥の干菓子に京都を懐かしく思い出しました。
名にし負はばいざ言問はむ都鳥
わが思ふ人はありやなしやと 在原業平
伊羅保や絵唐津の茶碗、青磁三島の菓子鉢などを印象深く手に取らせていただきました。
ご自作の繊細な茶杓にふと戦国武将に想いを馳せ、伊勢物語の和歌からの命名も嬉しく、いろいろな連想やお話が楽しく広がって・・・これぞ茶事の醍醐味でしょうか。
さ月の晦に、ふじの山の雪しろくふれるを見て、よみ侍りける
時しらぬ山は富士の嶺いつとてか
かのこまだらに雪の降るらむ 在原業平
(カキツバタならぬアヤメを生けました)
相客のS氏はステキな方ですね。たくさんの感動を素直に体現して下さり、座が盛り上がり楽しゅうございました。
いろいろなことを良くご存じで、さりげなく拙い正客をサポートしてくださり、心から感謝しています。またお会いできれば・・・と思います。
ご亭主さまにはお疲れいかがか・・と思いますが、きっと「自分の茶事」をやり遂げた達成感でお疲れも吹っ飛ぶことでしょう。
本当にありがとうございました・・・。
かしこ 暁庵より (やっと)