暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

2016年 炉開きの会・・・・・その2

2016年11月06日 | 暁庵の裏千家茶道教室


(つづき)
葉茶上合一式が持ち出され、今日の炉開きのハイライト、口切となりました。
亭主Fさんが小刀で合口の封を切っていきます。

実は、この時が亭主の心意気の見せ所だと思っています。
お客さまが見詰め、口切への期待が高まる中、亭主はこの瞬間に魂を込め、主客一体となるような雰囲気を味わいながら口を切っていくのです。
なかなか難しいことですが・・・もし、そういう瞬間を味わえたら最高ですね。


(御茶入日記を連客で回し、
 頂くお茶を決めておきます)

口を切り終わると蓋を置き、正客へお尋ねします。
「いずれのお茶を差し上げましょうか?」
正客は口切を共有した喜びを感じながら、客を代表して応えます。
「初昔をお願い致します」
「承知いたしました」

茶壺より詰茶が上合へ開けられ、「初昔」の袋を取り出し挽家へ。
口切の風情の一つでもある、トントントトトーンという音の響きもよく、
上合にあけられた詰茶が詰と書かれた挽家へ入れられました。
茶壺が封印され、諸道具を水屋へ戻し、壷を網袋へ入れて水屋へ持って下がります。
最後に御茶入日記を下げ、茶道口で総礼して口切が終わりました。



初炭はYさんです。
釜を上げると、下火がかろうじて持てるほどで、時間の経過を物語っていました。
炉縁が羽箒で清められ、全員で炉の近くへ寄り、炉中や湿し灰を撒く様子、炭の継ぎ方を拝見します。
見慣れた風炉の炭と違い、炉の炭のなんと大きく頼もしいこと!
赤い炭火が美しく炉縁を照らし、撒かれた黒い湿し灰のコントラストに見惚れます。
点炭が継がれ、末客から席へ戻りましたが、このまま温かな炉を皆で囲んでYさんの手前を見ていたいような気持でした。
香が焚かれ、香合が拝見に出され、釜が掛けられました。
香合は織部の「くくり猿」、香は「黒方(くろぼう)」(鳩居堂)です。

初炭が終わると待合へ移動し、昼食(懐石弁当、煮物椀、一献、果物)を頂きました。
主菓子「亥の子餅」(寿々木製)が出され、腰掛待合へ中立となりました。


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2016年 炉開きの会・・・・・その1

2016年11月05日 | 暁庵の裏千家茶道教室

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                   「献上かざり」

11月2日に暁庵の茶道教室の炉開きの会をしました。
11月2日にしたのは2つの行事、「亥の子」と「献上かざり」を取り入れたいと思ったからです。

炉開きはふつう旧暦10月(亥の月)の初亥の日に行うそうですが、今年は11月1日がその初亥の日でした。
江戸時代から亥は陰陽五行で水性にあたり、火災を逃れるという信仰がありました。
茶の湯の世界でもその日を炉開きの日として、茶席菓子として「亥の子餅」を食べ、火災の厄除けや子孫繁栄を願います。

「亥の子(いのこ)」という年中行事があり、主に西日本で行われています。
旧暦10月(亥の月)の最初の亥の日に行われ、玄猪(げんちょ)あるいは亥の子祭りとも呼ばれていて、「亥の子餅」を食べ、無病息災や子孫繁栄を祈ります。

愛媛県西予市出身のツレの話では、その日に子供たちが地域の家々を、唄を歌いながら亥の子石で地面を搗いて回るそうです。
子供たちが石を搗くと、餅、菓子、小遣いが振る舞われ、皆で均等に分けるとか。
外国の風習のハローウィンが日本で大もてですが、「亥の子」の年中行事は廃れつつあるらしく、なんか残念ですね・・・。
菓子舗「寿々木」製の「亥の子餅」を予約できたので、炉開きの趣向の一つにしました。
(亥の子餅を食べ終わってから写真がないのに気が付きました・・・ )


「遠山無限碧層々」のお軸

もう一つは「献上かざり」です。
11月3日は「文化の日」ですが、昭和23年までは「明治節」といい、明治天皇の生誕日でした。
「明治節」を祝って、菊の花を奉書と紅白の水引で飾る「献上かざり」をしたそうです。
菊花は黄色で、2日までは小菊を、3日からは大輪の菊を飾ります。
この風習もすっかり廃れてしまっていて、茶友の炉開きの茶事(2014年11月)で初めて見聞きした次第です。
それで、11月2日なので黄色い小菊の「献上かざり」とし、趣向の一つにしました。                
さて、肝心な炉開きの会ですが、茶事の稽古になるので茶事形式で行いました。
待合(板木、白湯)、外腰掛、迎え付け、席入、(炉開きの挨拶)、口切、初炭、昼食(懐石弁当、煮物椀、一献)、菓子、中立(銅鑼)、濃茶(台天目と濃茶平点前)、薄茶、退席です。



待合で詰Yさんが板木を打つと、亭主Fさんが汲み出し(志野焼)をお出しし、外腰掛へご案内しました。
席入後に改めて炉開きの挨拶をし、新しく入会された方の紹介や全員の自己紹介をしました。
亭主Fさんへ再びバトンタッチし、お一人ずつと挨拶を交わし、いよいよ口切です。
正客N氏より「ご都合によりお壷の拝見をお願い致します」
「ご都合により・・・」と言ったのは、口切の前と、口切の後に拝見するのと仕方が二通りあるからです。ここでは口切の前に拝見する仕方で行いました。

床に荘られている壷がかぎ畳へ運ばれ、口紐と網が外され、かぎ畳を大きく回って正客前へ運ばれました。
右から左へ、左から右へ・・・・、カニ手(?)で壺を持ち、重いので下でごろりごろり・・・ゆっくり回して拝見です。



拝見を終わり、亭主が御茶入日記を正客へ運びだし、壺を持ち帰ります。
封印を改め、再び口覆をすると、正客N氏より
「お壷は?」
「丹波焼で、市野信水作でございます」
「小壺ながらぴりりっとした切れ味があり、壷肌にかかる釉薬の景色が何とも味わい深く・・・堪能させていただきました。お口覆の裂地は?」
「笹蔓緞子でございます」
「ありがとうございました」


       2016年 炉開きの会・・・その2 へつづきます


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