暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

鎌倉円覚寺の風入と呈茶席

2016年11月25日 | 暮らし

11月3日~5日まで鎌倉円覚寺で宝物風入がありました。
最終日5日の午後、5年ぶりに円覚寺を訪れました。
円覚寺は正式には瑞鹿山円覚興聖禅寺といい、臨済宗円覚寺派の大本山です。

                    

お目当は円覚寺の開山・無学祖元(仏光国師)の所要品を入れた開山箪笥と国宝・舎利殿です。

開山箪笥は背負えるくらいの小さな箪笥のため、火災などの難を免れ、今に伝えられています。
繊細な鎌倉彫や自然木の払子(ほっす)、水晶の数珠、団扇、精密に彫られた酔翁亭図堆黒盤や椿梅竹文堆朱盤がガラスケースの中に展示されています。
開山箪笥の中には九条袈裟や法具を包んだ帛紗があって、遠く中国の南宋や元時代の織物、染色、刺繍の素晴らしさが垣間見られます。
それにしても開山・無学祖元が使用した物たちのなんと繊細で優雅でオシャレなことか・・・当時の仏教文化の質の高さにびっくりしました。

                                          
                    
                          開山所用と伝えられる茶道具

九条袈裟(たぶん「白茶地団龍文紋羅九条袈裟」だと思う・・・)が一枚展示されていました。
しっかり見ようとして、右足指を防御柵にぶつけ、おもわず「痛いっ!!」 
すると、目の前の廊下に座っていらした3人の御坊様から声が掛かりました。
「あぁ~痛かったね。痛いのは生きている証しや・・・」と。
「・・・・(痛みでしばし絶句のあと)なぜ九条袈裟と言うのですか?」とお尋ねしました。

お坊様が通常着用している袈裟の大きさが一条、九条とはその9倍の長さ、約4メートルの大きな袈裟が九条袈裟です。
四ツ頭など正式な儀式には九条袈裟を着用しますが、大きな袈裟のため着用が大変で難しく、円覚寺では七条袈裟を用いることも多いとか。

風入なので、どの部屋にも素晴らしい墨跡、書状、仏画などが所狭しと掛けられています。
足指の痛みをこらえながら見て回りましたが、いささか疲れてきたころに
「茶席で抹茶を一服いかがでしょうか? 最終のお席になります」とお声が掛かりました。
喜んで第二展示場(大書院)の呈茶席へ入りました。

                    
                              大書院から庭を見る

床には無準師範像(南宋時代の高僧、無学祖元の師)、無学祖元像、夢窓疎石像の3幅の肖像画が掛けられています。
点前座には風炉釜、染付の水指が置かれた高麗卓があり、私は点前座に近い末座に座れたのでじっくりお点前を拝見させて頂きました。
お点前は若い雲水さん、裏千家流です。
文字で表現するのは難しいのですが、歩き方、茶碗の運びだしから魅了されました。
所作の一つ一つが基本を守りつつ、指の先端まで神経が行き届いているような繊細な美しさを感じ、
1つも漏れさじと見つめます。

特別注文したという蓮弁の菓子と、天目台に乗った茶碗が運ばれてきました。
菓子と薄茶を頂戴しましたが、その間もお点前が気になって目が離せません。
最初から最後までゆったりと落ち着いたテンポも、閑かなる気迫も崩さず、見事でした。
別世界のような清々しい雰囲気はお点前の雲水さんのお茶に対する心構えや日常の修練から生まれていると思うのですが、
円覚寺の風入へ来て思いがけず、自らを反省する機会を得、茶の原点に触れたような気がしています。
(きっと今の私に必要なことだったのでしょう)

                    
                    妙香池(みょうこうち)・・・夢窓疎石作と伝える庭園の遺構

日が落ちるのが早いので、せかされるように国宝・円覚寺舎利殿へ。
大好きな舎利殿と5年ぶりの再会でしょうか。
そのあとに弁天堂と「洪鐘(おおがね)」へ長い階段を登り、眼前に広がる北鎌倉の秋景を楽しみ、帰途に着きました。

                    
                              国宝・円覚寺舎利殿

足指の痛みが取れず、2週間以上が経ってから近所の整形外科へ行き、レントゲン写真を撮りました。
「ほらっここ見て。骨折しています・・・」とM先生。
湿布して、中指と一緒にテーピングしていますが、年内にくっつくかしら??