「 寅 清風生八極 」
6月11日、五葉会(七事式の勉強会)のお仲間Tさんから茶事へお招き頂きました。
客は全員五葉会のメンバーで、正客は不肖・暁庵、次客Fさん、三客Yさん、詰Kさんです。
待合は1階のリビング、壁床に大きな水墨画のお軸が掛けられています。
上部に芭蕉が茂り、下方に蛙が一匹描かれていて、水無月にぴったりの掛物でした。
蛙と目があって、おもわずギクリとしました。
冷たい白湯で喉を潤し、庭の腰掛待合へ。
一枚板を敷いた工夫の腰掛に座ると、目の前に水槽のビオトープ。
蓮や珍しい水生植物を眺めていると、ご亭主の迎え付けです。
蹲で身を浄めてから2階へ上がり、八畳の茶室へ席入りしました。
床には横物のお軸が「え~と・・・う~ん・・・」、あとでお読み上げ頂くと、
「寅 清風生八極」 (とら せいふうはっきょくにしょうず)
紫野大梅(大徳寺四百八十九世、太田大梅)筆、
「清風生八極 老虎出南山」が出処、寅は竹を表わす意もあるそうです。
八極とは、東・西・南・北・乾・坤・艮・巽の八方のことで、
竹林から寅が現れ、清らかで爽やかな風(仏の教え)が八方(世界の隅々)に吹き渡っている・・という意味でしょうか。
五葉会で月に一度切磋琢磨しているのですが、ご自宅の茶事へ伺うのは初めてで、嬉しく挨拶を交わしました。
実はご亭主Tさんは私が茶事へのめり込む(?)きっかけをくださった、一人なのです。
Tさんと8年(?)ほど前にお目に掛かった時だったと思います・・・。
「今、私(Tさん)はお茶事に精出しています。
母がやはりお茶をしていて、お茶事をやりたい一心で道具を揃えだしたのですが、
茶事の道具が揃った時には年を取りすぎて、お茶事をやる気力が無くなっていたのでした。
それで今、出来るときに出来る茶事をやっていこうと・・・」
本当にそうですよね!・・・この言葉に心から賛同し、大きな勇気を頂戴したのでした。
挨拶の時にそのことを申し上げ、当時のことを懐かしく語り合いました。
次々運ばれるTさん手づくりの懐石に皆で舌鼓を打ち、ステキな器の鑑賞も楽しく、ついお話も弾みました。
特筆は黒漆塗の煮物椀でしょうか。
大きめの碗形も好ましく、一つ一つ絵柄が違います。
暁庵のは青楓、数個の楓がプラチナで描かれていて、一層の趣と豪華さを添えています。
知人の工芸デザイン作家さんへ1年に1個ずつ注文し、10年掛けて10碗作って頂いたというお話にびっくりするやら、感動するやらの客一同でした・・・。 -continue -
清風の茶事へ招かれて・・梅雨の合間に (その2)へつづく