暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

お茶サロン・聴雨の茶会-3

2015年07月07日 | お茶サロン&ご近所さんと茶会
                              6月の押物「青もみじ」 (京都・植村義次製)
(つづき)
薄茶点前は洗い茶巾にしました。
洗い茶巾は十三代圓能斎が創案した夏季に行う薄茶点前ですが、
そのルーツは瀬田掃部(せたかもん)にあると言われています。

瀬田掃部は安土桃山時代の武将で、利休七哲のひとりとも言われている茶人です。のち豊臣秀吉に仕えて近江の地を与えられましたが、文禄4(1595)年豊臣秀次の事件に連座して刑死しました。

「南方録」に、瀬田掃部愛用の高麗平茶碗の大ぶりなのを(畳目十四半)、利休が「水海(湖)(みずうみ)」と称し、瀬田と湖に因んで瀬田唐橋の意味を含め、自ら大茶杓を削って茶碗に渡したが、掃部はこの因縁により自分の茶杓をこの型に拠ったため、大ぶりの茶杓を掃部形と唱えるようになったと記されています。(新版・茶道大辞典「掃部型」より)。
「さらし茶巾」と呼ばれる点前を考案したといわれています


                     
                           比叡山山頂から琵琶湖を眺める

瀬田掃部のエピソードに興味を持ち、大きな清朝青磁茶碗(鉢)と特注の長い元節の茶杓を使い、
「さらし茶巾」を連想する「洗い茶巾」を愉しんでいただければ・・・と思いました。

洗い茶巾は水音を三度聞かせ、涼を楽しんでもらう点前です。
最初は茶碗に七分の水を張って茶巾を浸し、その茶巾を引き上げる時、
二度目はその茶巾を絞る時、三度目は茶碗の水を建水にあける時です。
三度目は大量の水をあけるので工夫のしどころと思い、いろいろ試してみました。

雨垂れや筧のようにチョロチョロと細く長くを試みていた時、
思いがけず隣室で寝転がって聞いていた息子から声がかかりました。
「何?その音!小便のように聞こえるよ。量もぴったりだし・・・」
びっくりして若旦那に幾通りか拝聴していただき、やっとOKが出ました。
・・・でも、思いがけなく愉しい時間でした。
お客様には如何でしたかしら?

                     
                              干菓子「くるみの里」
干菓子は二種、
一つは京都で最初のお友達TYさんが茶会のために贈って下さった押物、月々により柄が違い、6月は青もみじです。
植村義次製(京都市中京区)の芸術品のような押物を盛りつける前に記念にパチリ。
もう一種は、先日の研究会茶会で出合った「くるみの里」、加賀・御朱印から取り寄せました。

7人のお客様にそれぞれ違う茶碗で薄茶を点てて差し上げました。
聴雨・・雨水・・水色、青と連想し、「青の幻想」と題して7つの茶碗を選びました。が、「青の妄想」だったかも・・・。
お客様に茶碗の感想を伺うのも愉しく、持ち主が知らない茶碗の特徴や魅力を発見したりです。
思い出に茶碗について記しておきます。

                     

正客Yさま・・・瀬田掃部が使ったような大らかな茶碗は清朝青磁鉢です。畳目十四半と言われる「水海」とほぼ同じ大きさなので、「喫むとき、怖かった・・」という感想も納得です。

Mさま・・・葵天目、最近お気に入りの茶碗です。珠光青磁を思わせる色、葵文、侘びた趣きに心惹かれますが、如何でしょうか? 同じ青磁でも主茶碗と大きさ、形、色が対照的なので使いました。高台までしっかりご覧くださり、感激です。

Nさま・・・祥瑞(三代三浦竹泉作)、気に入って頂けて良かった! 御目出度い文様なので雨に因み「狐の嫁入り」と名付けました。好い天気なのに雨が降っている不思議な光景を言います。半東Aさんの心をこめた薄茶、お褒め頂き嬉しいです。

Aさま・・・上野焼の名碗(私が言うのも変ですが・・・)で、物語のできるお気に入りです。雨に因み「白雨(はくう)」と名付けました。夕立のことで、激しい雨中に一瞬、陽が差して白く見える様子から「白雨」と呼ぶそうです。

Mさま・・・瑠璃ガラスに銀色の「雨の涙」が美しい茶碗です。いろいろな連想(銀河系宇宙、天の川、空から降る雪など)が広がり、楽しめます。また、七夕茶会で大活躍してくれそうです。

Kさま・・・仁清写水玉文、躍動感のある水玉がモダンな印象です。雨に因んで「虎が雨」と名付けました。大きな水玉文が、大磯の遊女・虎御前が亡き恋人・曽我十郎を想って泣いた大粒の涙のように思われたので・・・。

詰Yさま・・・水色の薄手の茶碗は淡路島のT氏(心に残るステキな茶事をなさいます)から餞別に頂いた大事なもので、「淡路」と名付けて愛用しています。尼崎・琴浦窯の和田桐山作です。


茶会の後は再び椅子席にて珈琲を飲みながら茶論を交わすサロンと続きました・・・・
お客様、お手伝い頂いた半東Aさんに心から御礼を申し上げて、これにてこの項を終わりといたします。
ありがとうございました! 
                           やっと   夕方から雲行きが怪しく  

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お茶サロン・聴雨の茶会-2

2015年07月05日 | お茶サロン&ご近所さんと茶会
(つづき)
美味しい濃茶と薄茶を差し上げたいと、一番気をつかったのは火相と湯相でした。
始まる2時間前に風炉へ火を入れ、釜を掛けておきました。
席入前に風炉の下火を整えて、香の後に初炭です。

鵜籠(うかご)に炭を組み、炭手前をしました。
釜は波文尻張釜、初代・畠春斎作です。
5月の初風炉から使い始めましたが、さび色が美しく佳い味わいが出てきました。
心して月形を切り、白檀を焚きました。
香合は大徳寺浮見堂古材で作られた屋形舟、作者は稲尾誠中斎です。
N先生から京都で頂戴したもので、屋形舟で鵜飼い見物へ・・・。

                      

「パチパチッ・・」
(炭の熾る音に安堵し、風炉と灰をしっかり温めておいて良かった!)
「昼食を椅子席へ用意しましたので、こちらからどうぞ・・・」
昼飯はお弁当です。
以前、よく茶事でお世話になった翠晶庵の横山和子さんに作って頂きました。

自製の吸い物と八寸、一献(越の寒梅)を差し上げ燗鍋をお預けし、
「水屋にてお相伴させていただきます」
味や量は如何でしたかしら?
ボリュームもあったのですが、水屋の二人は美味しく完食です。
菓子(銘「よひら」暁庵製)を染付の大皿でお出しし、中立(しばし休憩)をお願いしました。

銅鑼を七つ打ち、後座の席入です。
その日は雨の予報が大はずれ、日差しも強かったので待合から蹲へ直行して頂きました。
後座の床は「無我」の軸はそのままとし、「雨降り花(昼顔とも)」を簗籠へ、
この花を摘むと雨が降る・・・と幼い頃かたく信じていた花です。

                      

御本三島と楽茶碗の重茶碗で、濃茶二服をお点てしました。
「おふく加減いかがでしょうか?」
「大変おいしゅうございます」(ほっ・・・!)
茶銘は松花の昔、小山園詰です。

湯相、火相は良かったのですが、このあと薄茶の最後まで火が持つか・・・気になり始めました。
実は今回のハイライト(?)は薄茶、火が落ちたら美味しい薄茶を何服も点てられないと思い、急遽炭を直させていただくことに。
時間の都合で後炭の一番風情のある釜に水を足し茶巾で清める処と風炉中拝見を省略させて頂きました。

さて、いよいよ次は薄茶です。
                                 

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お茶サロン・聴雨の茶会-1

2015年07月03日 | お茶サロン&ご近所さんと茶会
6月28日にお茶サロン・聴雨の茶会をしました。

横浜に戻り、茶事ではなくもう少し気軽に何かできないかしら・・・と模索中です。
今回の茶会は、4月の茶会で3年ぶりにYさまにお会いして、その時の会話がきっかけになりました。

Yさまは仕事で忙しく、なかなかお稽古へ通うことができません。
それでも、それだからこそ、お茶と触れ合う時間を持ちたい、その時間を大切にしたい・・・と考えていました。
のんびりほっこりした茶席で雨を聴きながら、気楽にお茶を楽しんでもらいたい・・・
と、ブログでお呼びかけし、Yさまはじめ7人のお客様がいらっしゃいました。

                        

待合には横山大観の「雨はる」の色紙、足立美術館で求めたもので、
雨が上がり、山にかかった霧雲が晴れていく様子を描いた水墨画です。

待合は大テーブル(点茶盤と3つの喫架)を囲んだ椅子席です。
板木が7つ打たれ、半東Aさんが白湯をお出しし、腰掛待合へ案内しました。
(今回の茶会は、Aさんが半東として参加してくださり、強力な助っ人でした)
3年ぶりで筧を使ったのですが、水量調整が難しく、これからの検討課題です。
蹲を使い、迎えつけをし、初めてお客様と御目文字しました。

7人のお客様は、東京都から正客Yさまと次客Mさま、横浜市のNさま、福島県いわき市のAさま、東京都からMさま、Kさま、詰Yさまです。
灑雪庵の茶事へいらしてくださった方、勇気を出して初めて参加してくださった方など、今回のご縁を思いながら一人一人と挨拶を交わしました。

                        
                         
床には、周藤苔仙師の書「無我」を掛けました。

心に何か饗雑音を感じるとき、それは他人のせいではなく自分の「我」がそうさせていることにはっと気づきます。
「我」とは自尊心、うぬぼれ、我がまま、虚栄・・・・自分にとらわれる心です。
そんな時、「無我」の境地へ少しでも近づくと、饗雑音がすっーと消えて、穏やかな心が蘇ってまいります。
聴雨の茶会が平和な無我のひと時になれば・・・と願いました。

最初にお香を用意し、次客Mさまに香元をお願いしました。
蒔絵のある重香合は京都のSさまから餞別に頂戴したもので、嬉しい初使いです。
香は2種類用意しましたが、焚かれたのは「真那賀(マナカ)」。
軽やかな優しい香りを末席でご一緒しました。

先日のIさまの香席で頂いた資料によると、
 真那賀 (かん・・塩のからみ)
   香り軽く艶にして早く香の失せるを良しとす
   少しクセありて愁を含める女に似たれば小野小町とす


                       

次は「お炭を置かせていただきます」・・・(つづく)

                     その日は  夕方 
      
           お茶サロン・聴雨の茶会-2へつづく