暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

網走番外地

2009年08月10日 | 北海道-2009年8月
知床からサロマ湖へ向かう途中、映画「網走番外地」シリーズで
有名な「網走刑務所」に寄ってみました。

明治から昭和59年まで使用された網走刑務所は市街地へ移転して、
今は「博物館 網走監獄」として公開されています。
当時の受刑者たちの監獄生活が等身大の人形によって
リアルに再現されていました。

雑居房では六畳の板の間に4~5人が収監されていました。
板囲いのトイレがある部屋は、廊下の看守からは見え易く、
房内からは見えにくい斜め格子戸で遮断されています。

独居房もあり、こちらはトイレ付き三畳です。
明治の頃には、元士族の気骨ある政治犯も多かったそうですが、
北海道の開拓史は、これら受刑者が開墾、道路や鉄道の建設に
過酷な労働を強いられ、痛ましい犠牲の上で成り立ったことを
伝えています。

どんな人がどんな思いで、ここ独居房にいたのでしょうか。
廊下にはストーブ置き場が2台、冬は寒さが骨身にしみたことでしょう。
独居房内へはどうしても気が進まず、入ることができませんでした。

昼飯は食堂で「監獄食」600円也を食べました。
看守二人が見守る中、受刑者たちと一緒です。人形ですけれど・・・。
麦飯、秋刀魚の塩焼き、切干大根の煮物、胡瓜・ハム・春雨の酢の物、
味噌汁です。ヘルシーで、秋刀魚の美味しかったこと!

作業所、風呂、懲戒房、休泊所(移動監獄、通称たこ部屋)が
移築復元されており、貴重な入所体験でした。

高倉健さんの映画「網走番外地」シリーズを二人とも見たくなって、
帰宅してからゲオやブックオフでビデオを捜しました。
残念ながら、今のところご縁がありません・・・。
                            


       

       写真は「知床のオシンコシンの滝」 & 「美味しかった監獄食」

         
        北海道(2009年8月)   前へ      次へ


 

知床で出合った動物

2009年08月08日 | 北海道-2009年8月
今回の羅臼岳登山では頂上制覇はなりませんでしたが、
たくさんの動物に出合うことが出来ました。

大雪渓のある岩場でエゾシマリスを見つけ、
極楽平と弥三吉水でキタキツネに出合いました。
極楽平のキタキツネなんぞは登山者に慣れきっていて、
私たちが休憩している目の前をしゃなりしゃなりと、
気取って歩いて行きました。

「写真を撮るからちょっと待って!」
と、思わず自然体で声をかけました。
もちろんキタキツネは立ち止まりませんが、声に驚く様子も無く、
まるで貴婦人のような態度でした。
「あれで止まってポーズしたら、びっくりだけどね」と主人。

さらに下って「650岩峰」近くの林の中で何やら気配がします。
ヒグマ注意の看板の近くなので「もしや?」
と思いながら鈴を鳴らそうとすると、
「鈴を鳴らすな」と言うのです。

二人で静かにしていると、
ヒグマが約二十メートル離れた林の中に現れました。
クロではなく茶髪で中肉中背のヒグマでした。
何かの葉を食べています。
「もしこっちへ来たらどうしよう・・・」
と急に恐怖心が襲い、我慢できず鈴を鳴らしました。

ヒグマは鈴の音でこちらを見てから、ゆっくりと林の奥へ消えてくれました。
「鈴を鳴らすな・・と言ったのに」と不満そうな主人。
「あなたがターザンなら鳴らしません・・」と心の中で私。
13時過ぎ、無事にホテルへ戻ってきました。

        

「ホテル地の涯」には登山者が汗と疲れを流す露天風呂が
たくさんありますが、なんと全部混浴なのです。
滝川近くにある、四つの露天風呂は無料ですが、
脱衣場もなく、野趣豊かな野天掘りです。
一番奥にある「滝見の湯」へ主人に見張り番を頼んで入りました。

原生林の奥からヒグマにウォッチングされているかもです。
でも、風呂から出る頃には私自身の野性?がだいぶ戻ってきて
「見ても見られても、そんなこと大自然の中どうでもいいや」
という気になっていました。

私の入浴中に滝川へ立派な角を持った大鹿が現れたそうです。
昨日、ホテルへ来る途中にも百頭近くの鹿に出合いました。

今年は鹿が繁殖しすぎて、地元では困っているそうです。


        
    
  写真は、「キタキツネに出合った極楽平から望む羅臼岳」 
       「ヒグマ注意の看板」
       「ホテル近くで出合った鹿」

                        

       北海道(2009年8月)  前へ      次へ


北海道  羅臼岳

2009年08月07日 | 北海道-2009年8月
夏休み北海道旅行の最大イベントは羅臼岳登山です。
それで、羅臼岳の麓、岩尾別温泉「ホテル地の涯」に二泊しました。

車を降りたとたん、何ともいえない良い香りに包まれました。
それは甘酸っぱいスイカズラに似た花の香りです。
背後の山全体からその香りが漂ってくるようです。

あとでホテルの方にお聞きすると
「それは楡(ニレ)の花の香りでしょう。
 花は目立ちませんが、今ちょうど花盛りです。
 残念ながら、私たちの鼻はとうに麻痺していて
 その香りがわからなくなっていますけれど・・・」

羅臼岳往復で8時間かかるとのことで、
翌朝、5時半にホテルを出発しました。
久しぶりの登山なので、ゆっくり登り、行ける所まで行くつもりです。

羅臼岳のある知床半島はヒグマの生息地で、登山道に二ヶ所
ヒグマ注意!の看板がありました。
注意として、鈴などの鳴り物で早目に存在を知らせること、
食べ物などゴミを捨てないことでしょうか。
ホテルで鈴を2つ購入し、二人のリュックに取り付けました。

登ること3時間30分、ダケカンバやトドマツに覆われた樹林帯の
背丈がだんだん低くなり、所々に雪渓が見え始めると大沢に到着です。
今年は雪が多く8月だというのに大雪渓が残っていて、
雪渓を登らないと頂上へ行けません。
雪渓を登り羅臼平へ30分、それから羅臼岳の頂上まで1時間弱です。

アイゼンをつけて登る人
登山靴で果敢に登っていく人・・・いろいろです。
主人は運動靴ですので、とても無理は出来ません。
今回は大沢までとし、大雪渓を仰ぎながら昼食をとりました。

短い夏を惜しんで咲き競うエゾコザクラの群落を眺めながら
岩場にてしばし休息し、ゆっくり下山しました。
                            

     

     写真は「羅臼岳大沢の雪渓」と「エゾコザクラの群落」


           北海道(2009年8月)  前へ     次へ


北海道  野付半島

2009年08月06日 | 北海道-2009年8月
夏休みで、北海道は知床方面へ出かけました。
その日の女満別空港の天候は曇りのち晴れ。
レンタカーでルート334号線から244号線へ
斜里岳の裾野を走りぬけ、霧で見えにくい根北峠を越えて
標津町へ12時過ぎに到着。
ここから今日の目的地、野付半島へ向かいました。

川から流出する土砂により砂嘴が発達してできた野付半島は
狭いところでは幅50メートルくらいでしょうか、
オホーツク海と野付湾が左右に迫っています。

オホーツク海には北方領土の一つ、国後島が目の前に
見えるはずですが、雲に覆われてなかなか姿を見せません。
急に雲が薄くなってぼんやりと島影を見る事が出来ました。
「佐渡の感じに似ているわねえ~。」と私。
「島までの距離もそんなものなのだろう」と主人。

佐々木譲作「エトロフ発緊急電」を読んで以来、
北方領土の択捉島、国後島、樺太は行ってみたい処なのです。
晴れた日には警備のロシア兵が望遠鏡で見えるとか。
距離的には近いのにいつまでも遠い島です。
いつか自由に行ける日が来るのでしょうか?

延々と続く砂嘴の原生花園にはハマナス、エゾフウロ、
ノハナショウブなどが短い夏を謳歌するように咲き乱れ、
思わず歓声をあげました。

野付半島ネイチャーセンターへ寄り、原生花園から
トドワラへ続く木道を歩きました。
トド松の林が海水の浸食によって立ち枯れて風化し、
トドワラと呼ばれています。
風化は思った以上に進んでいて、土に返るのを
じっと待っている白骨のようです。

夏は訪れる人が多いけれど、他のシーズンに来たら
本当に心細くなるような荒涼とした風景だろう・・・
ふと寂寥感に襲われながらシャツターを切りました。

野付半島から羅臼町、知床峠を経て、宿泊地の
岩尾別温泉へ向かいました。
                    

      

  写真は「野付半島のトドワラ」と「原生花園のハマナス」です。

                        

            北海道(2009年8月)  次へ

思い出の茶事  一客一亭

2009年08月05日 | 思い出の茶事
京都での茶会を終えて、着物のまま姫路行き準急に飛び乗りました。
午後5時には姫路に着くはず・・・と思ったのですが、
その先の○○駅に着いたのは6時をかなり過ぎていました。

陽はとうに落ちて、降りる人もまばらな、真っ暗闇の無人駅です。
でも、輝くような笑顔で茶友(ご亭主)が出迎えてくれました。

荷物を置いて、すぐに庭の腰掛で迎え付けを待ちました。
今日のお客は私一人。憧れの一客一亭です。
ちいさな蝋燭が置いてある腰掛は12月だというのに寒くなく、
葉が少し残った樹木が煌々と月に照らされて、神秘的な夜でした。

月の光を浴びてうっとりしていると、かぐや姫ならぬご亭主が現れました。
蹲の水で身辺を清めてから、迎え付けです。
お互いに少々緊張気味で、無言の挨拶を交わしました。

にじり口から席に入ると、夜咄の設えです。
床には絵が掛けられていて、日本のものではないようです。
あとでお尋ねすると、フィリピンの女の子が描いた絵とのこと。
椿の花がかわいらしく活けられていました。

手作りのお菓子を頂戴し、流し点で薄茶を一服いただきました。
炉の流し点は客と向き合う形なので、一客一亭にぴったりです。

席中で静かに音楽が流れ、聴き入りました。
とても心地よいBGMで、茶席で音楽は始めての経験でしたが、
亭主が立ち働かなくてはならない一客一亭にはとても良い工夫
と感心しました。
もう一服所望し、美味しく頂戴しました。

それから、別室に移り、にぎやかに歓談しながら
イタリアンの夕食をご馳走になりました。
今日はこちらでお泊りです。

次の朝、朝茶事のおもてなしを受けました。
昨夜食事をした部屋へ通されて、思わず息を呑みました。

庭に面して広縁のある部屋は障子が全て開け放たれ、
清新の朝の気に満ちた茶席は山中の庵のようです。
存在感のある花器の風炉に雲竜釜が松風を奏でていました。

思わず深呼吸したくなるような、清々しいお席で
朝の一服をいただきました。

至福の茶とはこういう一服では・・・と思い、
ご亭主のあたたかなおもてなしが今でも忘れられません。