暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

思い出の茶事  正午の茶事

2009年08月24日 | 思い出の茶事
蓮見の朝茶事で正客をお願いしたKさんからメールが届きました。
今年はじめ、大寒の頃です。

早い春を感じながら、そして、昨年の「蓮見の朝茶事」のお礼の
気持ちをこめまして、粗茶一服差し上げたくご案内申し上げます。

半東をしてくださったTさんと私を茶事に招いてくださったのです。
蓮見の朝茶事より既に半年過ぎており、私は母の介護をしながら
時折の茶事で心のバランスを保っていました・・・。
そんな時だったので、Hさんのお招きがとても嬉しく、久しぶりに
心が躍りました。

茶事はHさんの茶友Gさんの茶席で行われました。
床には百人一首の札がステキな額縁に飾られていました。

  君がため春野に出でて若菜つむ
     わが衣手に雪はふりつつ (光孝天皇)

  忍ぶれど色にいでにけりわが恋は
     物や思ふと人のとふまで (平 兼盛)

ご亭主が私とTさんのためにそれぞれ選んでくださった歌です。
光孝天皇の一首は私の大好きな歌で、中学生の頃、
若菜つむ光景と歌を描いたことがありました。
亡き父がその絵を気に入って、長い間実家に飾られていましたが、
その家も処分され、今は実家も絵も私の心の中だけの風景です・・・。

そして、忍ぶれど・・の歌は、婚約中のTさんにまさにぴったりでした。

懐石は、Hさんが心をこめて作り、運んでくださったものです。
Tさん、Gさんとなごやかに歓談しながら、
早春の味覚を味わいました。

後座で、丁寧に練られた濃茶を美味しく頂戴しました。
チューリップ模様のような仕覆に入った小振りの茶入、萩の茶碗、
素晴らしいお道具をご用意されて、楽しませていただきました。
古袱紗は赤い荒磯緞子、亡きお母様の形見のお品だとか。
きっと何処かで喜んで、ご亭主を見守っていたことでしょう。

半東のYさんのお点前で、薄茶を頂戴しました。
Yさんにお目にかかるのも蓮見の朝茶事以来です。
あの時のお軸「清流無間断」のように、
皆様とご縁が続いていることがとても嬉しいです。

初々しく真摯なお点前、お心がこもったおもてなし、
チームワークの素晴らしさが清々しく思い出され、
心と体がほのぼのと温まるお茶事でした。