暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

能「道成寺」フェスティバル

2013年05月06日 | 歌舞伎・能など
                  (道成寺といえば満開の桜です)

3月に観た「西行桜」が忘れ難く、再びお能の世界へ引き込まれています。

大槻能楽堂改築三十周年記念「道成寺フェスティバル」が4月~6月にかけて
全5回、第一線で活躍する役者によって演じられています。

歌舞伎や日本舞踊の「娘道成寺」は大好きな演目でしたが、
お能は初めてなので是非この機会に見たいと、
4月27日(土)の第一回目、片山九郎右衛門の「道成寺」へ出かけました。

あらすじは、
   紀州の道成寺で長らく失われていた鐘を再興する供養があり、
   住職は能力(寺男)を呼び出し、
   「わけあって供養の場へは女人を入れてはならぬ」と申し渡します。
   そこに白拍子が現れ、能力に懇願して舞を見せることを条件に
   寺内に入ってします。

   実は、この白拍子、昔ある山伏に恋の恨みを持った女でした。
   白拍子は一歩一歩鐘に近づいたと思うと、
   鐘を引き落としてその中へ姿を消し、ついには蛇体となって現れます。
   僧と蛇体と化した女との闘いになりますが、
   ついに祈り伏せられ、日高川へ飛び込み、姿が見えなくなりました。

               

初めて観る能「道成寺」ですが、とてもシンプルな構成で解り易かったです。

「小書き」と呼ばれる特殊演出はありませんでしたが、
その分、白拍子(前シテ)が次第に恋の情念に憑りつかれていく様子が
長々と続く乱拍子の中に凝縮されていくようで圧巻でした。
やがて、鋭く研ぎ澄まされた舞は急に激しく動き出し、
舞台を右に左に横切りながら、役者の持つ全エネルギーを込めんばかりに
舞ったかと思うと(急之舞)、烏帽子を飛ばして
「思へばこの鐘恨めしや」
鐘の中へ飛び込み、その中に消えてしまいます(鐘入り)。

鐘入りの瞬間を固唾を呑んで待っていましたが、
白拍子が中で鐘を持つようにして飛び上がり、その瞬間にシテ方の鐘後見が
綱をゆるめて吊ってあった鐘を落としました。
わずか数秒なのですが、その間の取り方、つまり鐘後見との呼吸の合わせ方が
鐘入りの一番の難しさでしょうか?
中に入ってから飛び上がって鐘が落ちるまで少し時間が掛かった気がしました。
実際には1秒か2秒というわずかな時間なのでしょうが・・・。
この間合いは次に観る道成寺ではどう違うのだろうか?・・と楽しみができました。

ここで、語りが入り、昔、ここで起こった次のような物語をします。
  真砂の庄司の一人娘が奥州からやって来た山伏を未来の夫と思い込み、
  山伏に妻にしてほしいと迫るが、全くその気のない山伏はびっくり仰天して、
  この寺へ逃げ込み、寺の者によって鐘の中へかくまわれます。
  娘は追いかけ、日高川を「一念の毒蛇となって」泳ぎ渡り、寺中を探し回ります。
  鐘が下りているのを怪しみ「竜頭をくわえ 七纏い 尾にて叩けば」
  鐘は鉄湯となって中の山伏も焼け失せてしまったという。

                
                  (奈良・東大寺の鐘ですが・・・)     

再び鐘が引き上げられると、女は蛇体となって現れます。
僧たちの祈りによって般若の面をつけた蛇体の女(後シテ)は苦しみ悶えます。
後見が橋がかりへ行く後シテの装束の端を抑えたので、
「あらっ、何かしら?」と思ったら、「鱗落し」といって、
後シテの装束を鱗形(三角)に見せて下に落とす演出だと、あとで知りました。
もう一つ、蛇体を柱にもたれかけて回転する場面は調伏される無念さとともに、
蛇体となってまで男を恋い求める女の哀れさが漂う、秀逸な場面です。
あとで、ここは「柱巻き」という見せ場だとわかりました。

こんな調子ですが、命がけの恋の物語「道成寺」を堪能しました。
私にとってこれが「道成寺」のスタートです。
片山九郎右衛門の道成寺をベースに、急がずに観ていきたいですね。
次回は、6月15日(土)赤松禎英の道成寺へ行けたら嬉しいのですが・・・。

後見で出演予定の片山九郎右衛門の父君・片山幽雪は病気のため
梅田邦久に代られました。それが、ちょっと残念でした。
早く元気になってくださいね! 10月の「檜垣」出演を楽しみにしています。

                                  


2 コメント

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よかったですね♪ (ルナ)
2013-05-13 00:50:55
楽しまれたようで何よりでした(^_^)

六月のほうはわたくしもまいろうと思います。
ご一緒できたら嬉しいです♪
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スローペースを目指して (暁庵)
2013-05-13 08:26:19
コメントをいただき、ありがとうございます。
重い腰を上げて、大槻能楽堂へ行って良かった!
お能の好さを噛みしめています。

ルナさんに見習って(?)スローペースを目指しています。
六月の道成寺、ぜひご一緒下さい。
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