暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「雨月の茶事」・・・(2)懐石とお仕舞い

2024年07月11日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

 

つづき)

初炭を終わり懐石をお出ししました。

懐石は佐藤愛真さんが腕をふるってくださって、半東YRさんと水屋で相伴し、懐石を堪能できて嬉しかったです。献立を記します。

 

雨月の茶事の献立   佐藤愛真さん作成


向付  鱸の昆布〆 莫大 花穂 山葵 加減酢
飯   一文字
汁   胡麻豆腐 順菜 赤味噌 溶辛子
飯器 
煮物椀 小鯛の素麺巻  板蕨 隠元 青柚
焼物  かますの塩焼
強肴  翡翠茄子 車海老 南瓜 オクラ 青楓麩 トウモロコシ 炊合せ ふり柚子
箸洗  芽蓮根 梅香仕立
八寸  鮎の一夜干し 若桃の密煮
香の物 沢庵 瓜塩漬 茗荷の甘酢漬
湯桶
酒   大吟醸「白鶴」  (神戸市東灘区 白鶴酒造)
ワイン 「甲州」  

 

   (小鯛の素麺巻の煮物椀に舌鼓です・・・)

(翡翠茄子、車海老、南瓜、オクラ、青楓麩、トウモロコシの炊合せの一皿

・・・冷蔵庫で器ごとしっかり冷やして)

 

懐石が終わり、中立をお願いし、待合で主菓子をお出ししました。

主菓子は「したたり」(京都市・亀廣永製)です。「聴雨の茶事」にいらしたOYさまが贈ってくださったのを早速に使いました。お客さまから「わぁ~嬉しい!」「懐かしい!」「菊水鉾の茶席を思い出すわね~」と歓声が上がりました。

     (主菓子「したたり」です)

冷たい「したたり」を頂いてから、中立でお仕舞を全員で楽しみました。

今日の趣向の1つであるお仕舞いをEKさまにお願いしたところ快諾してくださったのです。演目は「遊行柳 ゆぎょうやなぎ」です。

分かり易いように次のようなプリントを用意してくださり、皆で鑑賞しました。

「遊行柳」は、藤沢の遊行寺の遊行上人一行が旅の途中、白河の関のあたりで有名な柳の朽木を見に行ったところ、老人の姿をした柳の精に出会う話です。この名木は西行や芭蕉のうたにも詠まれています。

 

【仕舞の詞章】

 されば都の花盛り。大宮人の御遊にも。蹴鞠(しゅうきく)の庭の面。四本の木陰枝たれて。暮に数ある沓の音。
 柳桜をこきまぜて。錦をかざる諸人の。花やかなるや小簾の隙。洩りくる風の匂ひより。手飼の虎の引綱も。ながき思ひに楢の葉の。その柏木の及びなき。恋路もよしなしや。

 是は老いたる柳色の。狩衣も風折も。風にたゞよふ足もとの。弱きもよしや老木の柳。気力なうして弱々と。立ち舞ふも夢人を。現つと見るぞはかなき。

【意味】

殿上人が蹴鞠の遊びをなさる時にも、四方の木のうちの一つには枝の垂れた柳を植えるのだ。鞠を蹴る沓(くつ)の音が夕暮に数多く聞こえてくる。

源氏物語』の若菜の巻には、柏木が蹴鞠をしていたところ、華やかな御簾の隙間からもれてくる風が運ぶ薫物の香りに心動かされ、そのとき飼い猫が長い引綱を引いて御簾を上げ、中にいた女三の宮を見初めたとある。長く忘れることのできない、柏木の叶わぬ恋である。 

老いたこの私は、古びた柳色の狩衣と風折烏帽子を身に着けて、わずかな風にも漂うほどに足元が弱い。ままよ、気力もない老木の柳ではあるが、弱々しくも立ち舞おう。

 

 (EKさま、ステキでございました! そして、ありがとう!)

 

折しも「雨月の茶事」にふさわしく雨がポツポツ降り始め、露地からではなく茶道口から後座の席入をしていただきました。 つづく)

 

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  「雨月の茶事」支度を楽しんで・・・

 

 


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