呉須で書かれた漢詩が一層の味わいを・・・
(つづき)
調べてみると、作者の違う2つの漢詩が書かれていることがわかりました。
王安石(北宋)の「元旦」と韓愈(かんゆ、唐)の「早春」です。
読みと意味が載っていたので記しておきます。
元日 王安石(北宋)
爆竹声中一歳除
春風送暖入屠蘇
千門万戸瞳瞳日
総把新桃換旧符
爆竹声中 一歳除(つ)き
春風は暖を送りて屠蘇(とそ)に入らしむ
千門万戸 曈曈(とうとう)たる日
総(すべ)て新桃(しんたう)を把(と)りて旧符に換ふ
爆竹が鳴りひびくうちに旧年は尽き
春風は暖気を送って屠蘇の盃もあたたかい
すべての家に初日がかがやくこの日
どの家も魔除けの新しい桃の木の符(ふだ)に取り換える
早春 韓愈 (唐)
天街小雨潤如酥
草色遥見近却無
最是一年春好處
絶勝煙柳満皇都
天街は小雨(しょうう)酥(そ)の如く潤う
草色は遥かに見るも近づけば却って無し
最も是れ一年春の好き処
絶だ勝る煙柳の皇都に満つるに(はなはだまさるえんりゅうのこうとにみつるに)
注)天街とは都の目抜き通り、皇都は都長安。
「虫喰い」と呼ばれる「ほつれ」も見られます・・・
小ぶりの筒茶碗ですが、「元旦」や「早春」の漢詩を詠じながら、正月や極寒の侘び茶に使ったら・・・その年は間違いなく「心清長寿年」でしょうね。
古染付特有の「虫喰い」と呼ばれる「ほつれ」(焼成により釉薬の一部がわずかに欠けた部分)が数か所見られ、これも「痘痕にえくぼ」でしょうか。
見れば見るほど、数寄者が好みそうな一碗です。それに、火入に使ったらステキ!でしょうね。
祥瑞詩入筒茶碗の仕覆
最後に仕覆のお話です。
格子柄の仕覆(綿?)が素朴であり、モダンでもあり、どんな由来の裂地なのか・・・気になっていました。
仕覆づくりをしているNさんに写真をお送りしたところ、ご丁寧なメールを頂戴しました。
仕覆の裂地ですが、実物を拝見してルーペで糸を見ないと何ともいえませんが
渡りの島木綿、下のリンクは望月間道の画像ですが、この格子部分の仲間では
ないか?または、それを模して日本で作られたものかも知れません。
http://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0009089
糸は、縦横双糸であれば、多分渡り島です。
島物は種類が多く、固有の名前を持つものが少ないのが実情です。
(格子柄も島物の仲間に入ります)
曖昧なお答えで申し訳ありません。
仕覆の裂地もなかなか奥が深く、興味深いです。
N氏、Nさん、いろいろお教え頂き、ありがとうございました!
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