暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「野月の名残りの茶事」・・(3)濃茶と薄茶

2023年11月16日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

    (点茶盤で中置の点前で、濃茶と薄茶を差し上げました)

つづき)

濃茶になり、ざわつく心を鎮めてから襖を開けました・・・この瞬間、中のお客さまの様子を窺い、心臓の鼓動を意識しながら襖を開ける瞬間が大好きです。

濃茶は特にいつも緊張感を持って、点前に集中するようにしています。四方の袱紗捌きの呼吸や間合い、茶入、茶杓、茶碗を清める時には姿勢よく、基本をしっかりと心がけて・・・。

その昔、敬愛する師匠が濃茶点前をしながら教えて頂いたことを時々思い出します。

「心を込めて点前をするのは誰でも心がけていることですが、心を込めて・・・をどのように表現して、お客さまにわかってもらえるか、感じてもらえるか、常に工夫し努力しています」・・・と。

「心技体」を点前で実践することが大事ということでしょうか。茶事だから・・・と言って急に出来るものではなく、普段の稽古がとても重要と理解していますが、最近は稽古が思うようにできない状態でお恥ずかしいです・・・

余計なことを書きましたが、その時は「美味しい濃茶を差し上げたい!」と、茶入から濃茶を掬いだし、各服点で4碗の濃茶を一心に練りました。

     (大樋 飴釉茶碗・・・梅山窯・中村康平作)

正客KTさまは黒楽茶碗(一入作)、次客オーネルさまは大樋・飴釉茶碗(中村康平作)、三客EKさまは御本雲鶴、詰AYさまは高麗三嶋でお出ししました。

「お服加減はいかがでしょうか?」「大変美味しく頂いております」のお言葉に安堵しました。

濃茶は「延年の昔」(坐忘斎好み、星野園詰)です。

茶入は薩摩焼胴締め(15代沈壽官造)、仕覆は二人静金襴、茶杓は銘「無事」(紫野 後藤瑞巌師作)です。

後炭を省略し薄茶となりました。

      (薄茶の点茶盤・点前座です)

     (薄茶点前中のY氏)

立礼の茶事を始めてから薄茶は半東にお願いしています。

その日は半東Y氏が中置の薄茶点前を緊張気味に務めてくださいました。暁庵は半東席へ座ってお客さまたちと親しくお話が出来て、とても嬉しい時間です。

Y氏が薄茶を丁寧に点ててくださっている間に茶談義や、オーネルさまのスウェーデンでのお茶の活動ぶりに花が咲きました。

   (オーネル宅のサマーハウスにて)

長い長い冬を過ぎて春になると、ストックホルムの国立民族博物館の茶室・瑞暉亭(ずいきてい)では茶道普及のデモンストレーションや茶会が精力的に行われています。もちろんオーネルさまだけでなくお茶を愛する方たちと協力し合って・・・裏千家茶道に励んでいるスウェーデンの方たちもいます。

お菓子は皆で手分けして餡子からつくるとか。先生が教室を閉められてから自主練習やオンラインの稽古や講義の話・・・どのお話もオーネルさまのお茶を懸命に探求するお気持ちが溢れていて、新鮮な刺激をビシビシ頂きました。

海外で苦労しながらも自分の茶の道をしっかりと歩んでいらっしゃるオーネルさまを今回の立礼の茶事へお招き出来て、本当に好かったと思いました。同席した方々もきっと大いに刺激を受け、感じることが多かったことでしょう。

 

      (祥瑞と瑠璃卯文の茶碗)

和やか中にもとても刺激的なお話を伺いながらY氏が、正客KTさまは銘「淡路」の茶碗、次客オーネルさまは祥瑞、三客EKさまは瑠璃卯文 、詰AYさまは祥瑞の茶碗で薄茶を美味しく点ててくださいました。

薄茶は「舞の白」(坐忘斎お好み、星野園詰)です。

薄器は根来薬器、茶杓は銘「寧(ねい)」(染谷英明作)です。

 

 

・・・こうして今年最後の「立礼の茶事」が無事に終わり、感無量です。

炉の時期は「立礼の茶事」をお休みして、来春までエネルギーを蓄えて、もし出来ることなら再開したいと、今は考えています・・・

皆様、本当にありがとうございました!・・・(4)後礼のお手紙へつづく

 

 「野月の名残りの茶事」・・(4)へつづく  (1)へ  (2)へ 

 

 


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