(つづき)
香に続いて初炭です。
炉縁を羽箒で清めだすと、お客さまが炉近くに寄って炉中を拝見するので、炉中の灰の景色や下火に気を配ります。
特に下火は初炭手前の前に香が入るので黒過ぎず燃え過ぎず、赤々とした菊炭の美しさを見て頂きたいもの・・・と、下火を入れる時間や熾し方を塩梅し、席入り直前に濡れ釜を掛けました。
「如月の茶事支度」に書いたように「如何に火が熾るのを遅くするか」が目下の課題です。
茶事の4日前に炭を洗いましたが、一番迷ったのは胴炭の大きさです。
前回の箱根・玉庭の初釜の後炭で胴炭が3分の2まで燃え尽きたのを経験していたので、いつもより太目の胴炭を選び、密に炭を置いて行きました。
釜は霰唐松真形釜(和田美之助造)。
自分で褒めるのも何ですが・・・品の好い大きさの霰に唐松模様が優雅に映えるお気に入りの炉釜です。
炉縁は真塗(輪島塗)、炭斗は常盤籠(和田青竺作)、羽箒は梟です。
京都・壬生寺大念仏の焙烙(ほうらく、ほうろくとも)を久しぶりに灰器に使いました。
京都では2月の節分に壬生寺で素焼きの炮烙(ほうらく)を求め、「家内安全、名前、年齢」などを書き、寺に奉納する風習があります。
奉納された炮烙は、春と秋に行われる壬生狂言「焙烙割」で豪快に割られ、奉納者は厄除開運の御利益が得られるということです。
京都の節分の賑わいや壬生寺の壬生狂言が懐かしく、お客さまと京都の話しで盛り上がりました。
気持ちが良いほど豪快な壬生狂言「焙烙割」
拝見に出した香合を取りに出ると、先ず炉縁正面に座り、帛紗を捌いて炉縁を清め、もう一度帛紗を捌いて釜の蓋を清め、蓋を切りました。
茶事独特のこの所作が好きで、真塗の炉縁を使うことが多くなっています・・・。
香合は金襴手横笛、松阪万古焼の佐久間芳丘作、香は薫玉堂の「花暦」です。
初炭を終えてから、元の待合へ動座して頂き、テーブル席で粗飯を差し上げました。
(テーブル席にしたのは、未だ膝や腰が本調子ではない亭主の軽減策です )
懐石終了後に主菓子「雪餅」(打出庵大黒屋製)をお出しし、中立をお願いしました。
(本当は、雪に梅の花びらが落ちる風情でお願いしたかったのですが・・・)
「雪餅」 打出庵大黒屋製
今回は手づくりの懐石ですが、献立を記録として記します。
懐石献立
向付 鯛の昆布〆め 穂紫蘇 山葵 かけ醤油
汁 蓬麩 白味噌 赤味噌 辛子
煮物椀 海老とホタテの真蒸 菜の花 椎茸 柚子
焼物 ムツ西京漬
預鉢 里芋(細生姜) 鳥の丸 鶯菜
強肴 蛍烏賊 三つ葉 独活 酢味噌和え
箸洗 松の実
八寸 鴨ロース 蕗の薹の天麩羅
湯桶
香の物 沢庵 野沢菜 柴漬
酒 雪椿
(デザート 文旦のはちみつ添え)
梅香る正午の茶事・・・(3)へつづく (1)へ戻る 如月の茶事支度へ