暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

梅香る正午の茶事・・・(3)

2019年02月28日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)



(つづき)
銅鑼を7つ打ち、後座の席入りの合図としました。

床にはネコヤナギと椿(春のうてな)を揖保川焼花入にいけました。
花入は兵庫県龍野市の揖保川焼作家・池川みどりさんの作で、正客Sさまと一緒に池川ギャラリ-を訪ねたこともあり、思い出深い一品でもあります。



もう一つの花、古木に梅の花がほころんでいる屏風を広げました。
「初めて拝見しました・・・」とN氏。
この梅の画は亡母から譲り受けた襖絵を4曲の屏風に仕立て直したものですが、年に数回この季節に広げています。(今年も広げることができてヨカッタ!・・・)



座が静まったのを見計らって、襖を開け、濃茶点前が始まりました。
「茶事は濃茶にあり・・・」と言われますが、主客共に緊張感のある大好きな時間です。
その日は、親しい皆様に温かく見守られながら、お点前をさせて頂きました。
帛紗を四方捌きしながら心を清め、美味しい濃茶を差し上げたい・・・と、気持ちを点前に集中させていきます。
・・・見守ってくださるお客さまと一体感を感じる得難いひと時でもあります。

心を込めて練り上げた一碗の濃茶ですが・・・
「お服加減如何でしょうか?」
「美味しく頂戴しております」
ニッコリ微笑んでお応えしてくださるSさまにホッと心が和みました。
濃茶は「慶知の昔」(小山園詰)です。

茶碗は白楽茶碗、染谷英明作です。
「小鷺」と命名して愛用していますが、その日は「軒端の梅」といたしました。
京都へ家うつりした2012年3月初め、最初に訪ねたのが「東北院」でした。
その昔、和泉式部が愛でたという「軒端の梅」を見に行ったことを思い出しながら・・・。


   白楽茶碗「軒端の梅」   染谷英明作


後炭になり、どのような炭の景色かしら?・・・内心ドキドキしながら釜を上げました。
「まぁ~」と炉辺のお客さまから嘆声がもれました。
時が流れ、炭も流れていましたが、後炭の景色ははかなく美しい・・・。
案じていた胴炭ですが半分以上残っていたので、そのまま残し、輪胴を焙烙の灰匙の上に仮置きしました。
丸ぎっちょ、割ぎっちょ、丸管・割管・枝炭、点炭を継ぎました。
後炭のもう一つの魅力の水次、霰唐松真形釜を濡れ茶巾で肩からぽんぽん叩いていくと、
「ちょうど肩が凝っていたの・・・気持ちが良い」と言わんばかりにほのぼのと湯気が上がって来て、霰釜の好ましさを改めて思いました。

薄茶になり、茶道口に座りお客さまにお願いをしました。
「薄茶は半東のFさんにお願いしたく存じます。
 また、半東見習いのUさんを末席へ入らせて頂き、お勉強させてください」

煙草盆、干菓子が運び出されました・・・この頃、鶯が一羽飛んできたようです。
Fさんの薄茶点前(鶯点て)が始まりました。
薄茶は「金輪」(小山園)、干菓子は打出庵大黒屋製の「煎餅」と「鶯の雲平?」です。
薄茶席に入って行く頃には、とてもとても和やかな雰囲気でお客さま同士のお話が弾み、私もすぐその輪に入って行きました。
一巡後、二服目は半東見習いのUさんに点てて頂き、道具の拝見までお願いしました。

薄茶の主茶碗は高麗三島・銘「伊備津比売(いびつひめ)」です。
正客Sさまが三島大好きなので、これを選びました。
替茶碗は、雲鶴青磁・銘「玉帚(たまははき)」で初使いできて嬉しいです。

茶入は薩摩焼・胴締め、沈壽官作、仕覆は能衣装裂、小林芙佐子仕立です。
薄器は几帳蒔絵の大平棗、中村宗恭作、
茶杓は聚光院の梅の古木で作られ、聚光院・小野沢虎洞和尚の銘「東北(とうぼく)」、川本光春作です。




いろいろ書き足らない事ばかりですが、今回はこのへんにて・・・。

素敵なお客さまとのひと時は奥深く心愉しく、今でも思い出すとかけがえのないひと時でした。
・・・そんなお出逢いが嬉しく、茶事を続けているのかもしれません。
ご来庵いただき、ありがとうございます!
お客さま、スタッフの皆さま、これからも末永くお付き合いいただけると嬉しいです。  


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