暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

梅香る正午の茶事・・・(1)

2019年02月25日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

   「梅香る」      (季節の花300提供)
 

2019年2月17日(日)に「梅香る正午の茶事」をしました。

今回のテーマは「梅」、我が家の梅がほころぶ頃なので先ずはいろいろな趣きで愛でてもらいたいと思いました。
席入りは11時。
立春を過ぎると、それまでの冬型の快晴が崩れ、毎日曇り空が続きました。
その日も朝から曇り、お日さまが出ていません。(どうしよう・・・)
祈るような気持ちで待っていると、11時近くにやっとお日さまが顔を出してくれました。
「ヤッタネ!」 

「梅香る正午の茶事」のお客さまは5名様、正客は京都で一緒に奥伝や茶事の研鑽に励んだSさま、次客OKさまと三客OYさまは東京教室のお仲間、若き論客の四客SSさま、詰は暁庵社中のN氏です。
親しくお付き合いさせて頂いている方々を大好きなこの時季にお迎えする喜びに浸りながら茶事支度に励みました

11時過ぎに詰N氏の打つ板木の音が聞こえ、半東Fさんが甘酒をお出しました。
汲み出しは、大学時代の同期生・青木念作の志野です
待合の煙草盆は黒掻き合せ塗の香座間透かし、火入はオランダを思わせる白磁です。
有馬・雅中庵での初釜の帰りに寄った京都・東寺のガラクタ市の掘り出し物で、初使いでした。

待合の掛物は「早蕨と春風」の画賛、やわらかなお人柄を感じさせる淡々斎の御筆です。
春風にやさしく吹かれながら早蕨の画を見ていると、中国・唐代の詩人・白居易の「春風」の詩が頭に浮んできましたので、席入り後にメモを見ながらご披露しました。


   「早蕨と春風」の画賛   淡々斎筆


   春風    白居易     しゅんぷう     はくきょい
   一枝先發苑中梅       いっしまずひらく えんちゅうのうめ
   櫻杏桃梨次第開       おうきょうとうり しだいにひらく
   薺花楡莢深村裏       せいかゆきょう しんそんのうち
   亦道春風我爲來       またいうしゅんぷう わがためにきたると

(意訳)
 春風は先ず宮中の庭の梅の一枝を開花させる。
 ゆすらうめ・あんず・桃・梨がしだいに開花させる。
 山深い里では「なずな」の花を咲かせ、「にれ」のさやにも吹きわたる。
 すると私は、春風が私のために来てくれたのだと思う。



その日は天気も良く風もなかったので、ベランダの腰掛待合でしばしご歓談いただきました。
それでも寒さ対策に輪胴3個を入れた大火鉢で暖をとって頂き、蹲踞に湯桶を用意しました。
迎え付けで正客Sさまと無言の挨拶を交わし、口切の茶事以来2年ぶりの暁庵の茶事へのお出ましに熱く込み上げるものがありました。



障子に映る梅の水墨画を愛でて頂きながら、お一人お一人とご挨拶を交わしました。
水墨画が見えるように毛氈を敷き、対面席にしましたが、
「お見合いでしょうか?」とN氏の声が・・・皆さま、びっくりされたようです。
梅の水墨画が美しく映るのは11時~12時半頃まで、日月や時間、日照によってどんどん変化していくので、ほんのひと時の水墨画とのお出合いなのです。
運が良ければ、メジロ、シジュウカラ、ヒヨドリなどが飛んでくることも・・・。




本席の床は「處々鶯」、
「處々」とは「あちらこちらに」、または「来てはとまる」という意味で、
こちらの書も鶯がいまにも飛んできそうな趣きがあり、両忘庵・大木宗玄和尚の御筆です。

対面席で先ずは香を聞いて頂きました。
優雅な蒔絵の重香合は京都を離れる時に正客Sさまに頂いた思い出の御品です。
いつも火味が難しいのですが、その日はぴったり・・・半東Fさんに感謝しながら香を焚きました。
「甘く佳い薫りですね・・・お香は?」
「昔、鳩居堂で手に入れました伽羅で、香銘は「初音」でございます」


      梅香る正午の茶事・・・(2)へつづく   如月の茶事支度へ



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