暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

東京教室の初釜 in 2019 

2019年02月06日 | 稽古備忘録・・・東京教室の稽古

     白梅が満開でした・・・2019年1月31日撮影

睦月最後の31日(木)は、S先生の東京教室の初釜でした。

昨年は1月末に華紅のお祝いの茶会があり、全員で京都・吉兆へ出かけたので、2年ぶりの東京教室の初釜です。
9時半頃に稽古場に着くと、本堂の前の梅が満開でした。
今年は梅が早いようですので、桜も早いかもしれませんね。


   露地の敷松葉が美しく・・・

10時開始の予定でしたが、電車が遅れているそうで、皆さまが揃うのを待っていました。
皆さま、初釜らしい華やかな着物と帯をお召しなので、もうそれらを鑑賞するだけでも心浮き立つ思いです。
有馬・雅中庵の初稽古を皮切りに社中の初釜や正月を祝う茶事などが続き、なるべく毎回着物と帯を変えることで初釜への新鮮な気持ちを維持したいもの・・・とがんばりました。
この日は金茶色の扇地文のある無地紋付に、金糸銀糸の羽根模様のある水色の帯を結びました。
本当に贅沢なことですが、日本に生まれてお茶をやっていてヨカッタ!とつくづく感じる瞬間でもあります。



床には「春涛」の二字、
まだ寒のうちですが、白梅が満開となり、春の息吹がすぐそこまでやって来ています。
花は白椿と梅、花入は竹一重切です。

あけましておめでとうございます
 今年もどうぞ宜しくお願いいたします




ご挨拶を交わすと、決められた席へ移動し、すぐに「花びら餅」が運ばれました。
なんと!京都・川端道喜製の「花びら餅」です。
味噌餡が柔らかく、上品な美味しさが口いっぱいに広がり、あっちこっちで感嘆の声がしました。
先生のお話では、ゴボウが外に出ていない関東仕様だそうで、柔らかな味噌餡がこぼれにくくなっているそうです。
私たちのために京都からお持ち出しの「花びら餅」に、皆嬉しく感激しました。

S先生の濃茶の初点が始まりました。
今回はご住職が正客として加わってくださって、総勢15名になりました。
しーんと静まり返る中、S先生が襖を静かに開け、茶碗を運び出します。
その足運びや所作を24ならぬ30の瞳が真剣に見入ります。
建水が運ばれ、陶器の蓋置が定座に置かれ、柄杓を引き総礼。
いつもの濃茶点前ですが、一挙手一動、S先生の動きに自分の点前を重ねて拝見させて頂きました。
茶入の扱い、茶杓の清め、茶碗の拭き方、何1つとして見のがしたくありません。

ふっと先生が幽かなため息をつかれたような・・・小さな間違いがあったようです。
お点前に心を重ねていた私も安堵しました・・・誰にでも間違いはあるもの、大切なのはその時の気持ちと対処だと思いました。
先生はあわてずさらりと対処されたので、とても素敵なお手本になり心に留めています。



お点前中、一番驚き感動したのは濃茶を練る時でした。
暁庵は濃茶の時、きっとお客さまから長すぎるのでは・・・と思われるくらい、丁寧に長く練るように心がけているのですが、先生はそれ以上に丁寧且つ長く練っていらっしゃいました。
やがて嶋台が定座に出され、「どうぞ7人さまで」と声が掛かりました。

私は四客で頂戴しましたが、熱々でしかもしっかり練られた濃茶はまろやかな甘みがあり、美味しゅうございました。
濃茶の名前を失念しました・・・思い出したら書きますね。
もう一碗は8名分だったと思います・・・このへんになると集中力もすっかり落ちてきました。
茶碗は嶋台の鶴亀、十二代慶入作です。
茶入は瀬戸翁手の銘「玉津島」、茶杓は認得斎作の銘「杖」でした。
有馬・雅中庵での初稽古の折に用意されたお道具をそのまま東京教室の初点に持って来てくださったのです。
いつもですが、S先生の優しく素敵なお心遣いが有難く嬉しいです。



薄茶は全員で員茶之式、札は百人一首を使いました。
亭主は宗勝さん、札元は宗優氏、目付は宗美さんでした。
札元が百人一首の札を詠みあげるのですが、朗々とよく響く美声にうっとり、一段と優雅な雰囲気が漂います。
(内心、大好きな和泉式部の歌が当たることを願っていたのですが)終わりから3人目くらいで当たりました。
周防内侍(すおうのないし)の歌で、春の短か夜の夢に見た幻のような歌です。

   春の夜の夢ばかりなる手枕(たまくら)に
       かひなくたたむ名こそ惜しけれ     周防内侍



薄茶の後、三友居の懐石弁当と椀物を頂戴し、お開きになりました。

末筆になりましたが、S先生、皆さま、2019年もどうぞ宜しくお願いいたします。