暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

”全慶應茶會” in 2017 へ

2017年11月15日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
           
              

2017年11月3日、根津美術館(東京都港区南青山)で行われた”全慶應茶會”へ出かけました。
”全慶應茶會”のしおりの題字は松永耳庵翁です。
この茶会は慶応大学の茶道部である慶應茶道会と、そのOB組織である三田福茶会による茶会で、毎年ひらかれているそうですが、三田福茶会Sさまのご縁で初めて参加しました。

大寄せ茶会が苦手な暁庵が参席したのは、上田宗箇流16代家元・上田宗冏 (そうけい )氏が濃茶席を持つと伺ったからでした。
なぜか上田宗箇流には関心があり、5年前に京都から広島の上田宗箇流・和風堂の初釜へ参席させて頂いたことがあります。
その時、御家元自らお点前してくださった濃茶のおもてなしが忘れられず、是非茶会へ・・・と思ったのでした。

           

寄付は一樹庵、掛物は「拾得図」、尾張徳川家二代・徳川光友画です。
珍しい広島焼の香炉が荘られていました。
上田宗箇流らしい銅蟲(どうちゅう)の盆で出された黄身瓢(空也製)、白餡を黄身餡で包み瓢形にしたもので、美味しく頂戴しました。
お菓子と一緒に上田宗箇流独特の折り方の懐紙が回され、中の四角の懐紙を濃茶で使ってくださいと。

本席の被錦斎へ席入りし、点前座が良く見えるが席へ座ります。
お点前さんは袴姿の男性、お運びも男性で、お点前をしっかり拝見させて頂きました。
武家流なので帛紗は右に付け、柄杓を左手に持たせ左膝に立て、右膝上で右手だけで帛紗を捌いたりします。
袱紗捌き、茶入や茶杓の清め方、茶巾の扱い、全て裏千家流とは違うので興味深く目を凝らしました・・・・。

御家元が出ていらしてご挨拶され、
全慶應茶會で釜を掛けるのは9年ぶりになります」
「釜を掛ける」とはよく言ったもので、この釜が圧倒的な存在感を放っていて、私には一番の垂涎ものでした。
形は立口木瓜、古武士を連想する鉄肌といい、鉄蓋の侘びた味わいも素晴らしく、シュッシュッと気持ち良い音をたてて湯が沸いており、濃茶への期待が高まります。

本席の掛物は、羽与一(細川三斎)消息です。
羽与一(細川三斎)から上主様(上田宗箇)宛に書かれた贈答品の御礼状で、二人の親密な様子がわかります。
十一月四日の日付があり、それで11月3日の慶應茶会へ掛けられた・・・とのお話でした。
花入は宗箇作の一重切、花がえ~と竜胆ともう一種?・・・・思いだせません。
箱書に宗箇様より拝領と書かれているそうですが、私の脳裏に今だ焼き付いている上田宗箇作の一重切(鋭く切り落とされ鉈目の迫力、勇猛にして繊細な味わい)とは違う作行でした(ショボン・・・)。
濃茶を4人で頂戴しました・・・が、練りが足らずこちらもショボンです(期待が大きかったので・・・)。

          

以下、濃茶席の会記から記します。
  香合   柿  平戸青磁
  釜    立口木瓜   浄清 造
   炉縁  イジ塗    道恵
  棚    四方棚    信斎
  水指   上田家御庭焼 葵  四代大機院(重羽)作
  茶入   瀬戸渋紙手 竹の子
       銘「細川」     松永耳庵 所持
   仕服  龍紋緞子
  茶碗   大徳寺呉器
  茶杓   古田織部 作
        筒 紹易
   蓋置  染付千切
   建水  砂張合子
   御茶  三春の昔      一保堂詰

           

薄茶席は弘仁亭でした。
こちらも偶然、上田宗箇流の学生さんの薄茶点前を拝見でき、ラッキーでした。
姿勢よくリズムよくしっかりお点前をしていたように思います。
きっと上田宗冏御家元自らご指導してくださったのではないかしら?
絶品の「亥の子餅」(塩野製)に舌鼓し、点て出しの薄茶(松の峰 三丘園詰)を頂戴しました。
慶應好はOBたちのセンスやユーモア溢れるお道具で、慶應茶道会の歴史と茶道への熱い思いが感じられ、立ち働く若者たちが眩しく頼もしく感じました。

Sさま、いろいろお世話になり、ありがとうございました。
”全慶應茶會”に来年もご縁があると嬉しいです。