暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

松風吹く正午の茶事へ招かれて・・・その2

2017年11月14日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
              

(つづき)
銅鑼が5点打たれ、後座の席入りです。
床には晩秋を感じる残花がふるさと籠にいけられていました。
ススキ、杜鵑、藤袴、白紫式部、烏瓜の5種、烏瓜の鮮やかな赤い実と蔓(ツル)が空間を見事に引き締めています。

静かに襖が開けられ、濃茶点前が始まりました。
濃茶を点てるまでの緊張感のある、沈黙の時間が大好きです。
ご亭主の袱紗捌きを集中して拝見していると、睡魔が襲ってきました。
なぜか、とっても気持ちが良いのです・・・・   
それは釜が奏でる松風のせいのようです。

あとで常盤釜を調べてみたら、玄々斎が天保14年(1843)に好まれた釜で、本歌には
「千代もなを常盤にたへぬ松のかせ(風)」と玄々斎自作の句が胴に鋳込まれていたそうです。
その後は無地で同形の釜が同じ作者・大西浄慶によって作られました)

・・・きっとそれで、常盤釜を作る釜師は「千代もなを常盤にたへぬ松のかせ(風)」を目指したのだろう、それであんなに気持ちの良い松風が吹いていたのだなぁ~~と。


             

目を閉じて半分まどろみながらうっとりしていると、突如その音は止みました。
水一杓が入れられたためでした。
まもなく芳しい茶香が鼻先に漂って来ます。
目を開け、松風がささやく余韻に浸りながら茶碗を取りに出ました。

黒楽茶碗に碧が美しく映え、よく練られた濃茶を美味しく頂戴しました。
茶銘は「万歴の昔」(伊藤園詰)です。
黒楽茶碗の銘はなんと!「松風」、昭楽造、紫野・剛山和尚銘です。

             

窠蓋(すぶた)のついた白い茶入が個性的で目を惹きました。
薩摩お庭焼だそうで、乳白色の胴に練り込みのようなすじ模様があり、こちらへ伺う折の秋空のすじ雲のように爽やかでした。仕覆はたしか?荒磯緞子です。
茶杓は「謝茶」、紫野・長谷川大真和尚の銘です。

続き薄茶で旅の思い出の茶碗や、亡き母上の手びねりの茶碗などで薄茶を頂きながら、卒寿のお茶の先輩、茶友、茶道具とのお出逢いのお話を愉しく伺いました。
本当に、出会いのご縁は何物にも変え難い、不思議で貴重なものですね・・・。

          
          11月2日は十三夜・・・居心地好くすっかり長居してしまい家路を辿りました

Hさま、素晴らしいお茶事をありがとうございました!
また、あの松風を聴けたら・・・と存じます。
五葉会の皆さま、拙い正客で失礼いたしました。
皆さまとの出会いのご縁を大切に、これからも七事式に茶事に末永く宜しくお願い致します。
 
                           やっとしました  


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