暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

夜咄の茶事へ招かれて・・・・・その1

2016年12月17日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)
                      

                      
                         茶事の写真がないので・・・・我が家のですが


今年も残りわずかとなり、年内にどうしても書いておきたい茶事があります。

12月3日(土)、Oさまから夜咄の茶事へ嬉しいお招きを頂きました。
本当に久しぶりの夜咄の茶事、ご指名で、不肖・暁庵が正客、次客はお名前だけは伺っているKさま、詰は社中N氏です。

茶事の数日前にOさまから電話を頂きました。
日没の関係で16時半から17時待合へ変更したいこと、Oさまは懐石に専念したく、亭主はOさまに代わってM氏が務め、半東はSさまがいたしますとのことでした。
(どうやらN氏の名残の茶事へお出まし下さったOさま、M氏、Sさまの3人連携でなさる夜咄の茶事らしい・・・と、やっと事情が呑み込めました)

さらに、次客Kさまは今日庵へ出入りしておいでの大先輩だそうです(陰の声・・・その方に正客を!)。
しかし、夜咄なので手足が覚束ないといけないので、正客をお願いしたい・・・とのこと、
「・・・委細、承知いたしました」と潔く覚悟を決めましてございます。

「何を着て行こうかしら?」
夜咄には灯火の邪魔をせず、・・・といって暗闇に潜むようなものでなく、さんざん迷った挙句、
口切(27日)に着たグレイの色留袖に、ある方から頂戴した紺地に尾長鳥の帯を締めて臨みました。
N氏も迷ったそうですが、袴ではなく十徳をお召しでした。

                      

O邸へ着くと、既にあたりは薄暗く、待合には行燈が用意されています。
先着の大先輩Kさまとご挨拶を交わし、萩焼でしょうか、達磨のような手あぶりに心もほっこり温まりました。
半東Sさまが汲み出しを運んできました。
「あらっ!何かしら? 甘いですね・・・」
なんせ薄暗がりの中、よく見えません。あとで伺うと橙(だいだい)のジャムが入っていたみたい。

    吾妹子(わぎもこ)に 逢はず久しも 甘美物(うましもの)
    阿部橘(あべたちばな=橙)の こけむすまでに      万葉集 詠み人知らず



                      
                                  橙(だいだい)           

手燭を持ち、三人一体となって外腰掛へ。
Oさん宅はいったん外へ出てから裏庭へ回ると外腰掛があります。
所々に足元行燈や灯りが置かれているのですが、手探りするように芝戸を開けて外腰掛へ辿り着きました。
そこは都会とは思えぬ別世界、しだれ桜でしょうか、葉をすっかり落した樹が灯りの中に浮かび上がり、石灯籠に蝋燭が灯っています。
灯りのあやなす趣きを楽しんでいると、ご亭主M氏が湯桶を持って現れました。
胸に熱いものを感じながら手燭の交換をし、無言の挨拶を交わしました・・・。

手燭で足元を照らしながら一歩一歩蹲踞まで雁行(直下行?)、一足お先に席入りしました。 


        夜咄の茶事へ招かれて・・・その2へつづく


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。