暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

むらさき茶会ー5

2015年11月10日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)
点前座へ戻り、替え茶碗で仕舞い付け、
「続いて薄茶を差し上げたく存じます。
 薄茶は半東Kさんに代わりますので宜しくお願い致します」

煙草盆や干菓子が運び出され、薄茶点前が始まりました。
Kさんのしっとりした点前をじっくり鑑賞して頂きたくて、ゆっくりめに席へ戻りました。
お色直しは帛紗、「赤」の帛紗を南坊流の先生方から頂戴した「鼠藤」に変えて・・・。

お正客さまと次客さまは祥瑞の主茶碗(三代三浦竹泉作)、
三客さまは「うずまき」茶碗(三代井上良斎作)、揖保川焼(池川みどり作)など全部で12碗、
縁あって手元に集まった茶碗を総動員して薄茶を差し上げました。

総動員の中に池川みどり作の茶碗(濃茶と薄茶)がありますが、
播州播磨のKさんから「茶会に使って」とお借りしたものです。

                          
                             金継が美しい茶碗を濃茶に・・・(池川みどり作)

大好きな陶芸家・池川みどりさんの茶碗を購入して使いたい・・・と個展を待っていたのですが、
当分個展は無理らしくKさんに相談すると
「たくさんあるから私のを使ってください。みどりさんも喜ぶと思うから・・・」
と茶碗4個が送られてきてびっくり・・・。(いつもアリガトウ!)

                            
                                  ちょっと粋な薄茶の茶碗 (池川みどり作)

茶入、茶杓、仕覆、薄器を拝見にお出ししました。
茶入は藤村庸軒(反古庵とも)好の凡鳥棗です。
以前入手の経緯をブログに書きましたが、姫路のSさんから
横浜に縁のある庸軒流茶人・伊藤庸庵の箱書があるので、横浜へ帰る暁庵さんに使って頂きたい」
と託された棗です。
                            

「凡鳥之棗 反古庵好ミ写也  庸菴」と箱書に書かれています。
利休形大棗より大きく、形も少し違い、塗は真塗(本歌は初代宗哲、五郎塗)です。
蓋の表に桐、蓋裏に凡鳥の朱漆書があります。
・・・仕覆を着ていても仕覆を脱がしても、存在感が凄い!です。

                            

仕覆の裂地は茶地唐草鳳凰文緞子(本歌は笹蔓緞子)、仕覆を教えて頂いた小林芙佐子先生に仕立をお願いしました。
薄器は根来茶器、寺院で使われていたちゃつ(茶子)の転用で黒塗蓋があります。

                           
                                白鶴と紫の桔梗の和三盆 (ピンボケですが・・・)

干菓子は白鶴と桔梗の和三盆、薄茶は奥西緑芳園の寿の昔と千代昔のブレンドです。
茶席のお運びは社中のAさん、Yさん、M氏、Kさんにお願いしました。
この茶会でお手伝いやお運びデビューの方もいらして、さぞや緊張したことでしょう。
水屋からの点て出しは担当のSさんとYさんが腕まくりで頑張ってくださったことでしょう。
そして、きっと心に残る貴重な経験になったのでは・・・と願っています。

                            

最後に茶杓のお話をしてむらさき茶会・茶席の幕を閉じることにします。

茶杓は、紫野・後藤瑞巖師の作、銘「無事」。
形は大徳寺形(有馬山形とも)、白竹の景色に寂びた風情を感じるお気に入りです。
古来稀なり・・・という70歳、よくぞ「無事」に辿り着いたものと感慨一入です。
その古希をお茶の知友に祝って頂いて、こんなに幸せなことはないと感謝しております。

その一方で、「無事」という言葉は「ことをなくす」とも・・・
今までのことを全て無に帰して、今日を無からことを始める、新たなスタートの日にしたいと思いました。

皆さま、これからも宜しくお付き合いのほどをお願い致します。
                                          

       
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