暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

西行庵・西行忌茶会-1  浄明庵濃茶席

2014年03月16日 | 献茶式&茶会  京都編
                円山公園の枝垂れ桜(2012年4月撮影)

3月14日、西行庵(東山区円山公園)の西行忌茶会へ伺いました。

京の真葛ヶ原西行庵は西行法師終焉の地として伝えられています。
この地には西行法師の遺徳を慕う聖たちによって御堂が建てられ、
御霊が祀られてきましたが、明治以降は見る影もなく荒廃していたそうです。

明治26年(1893年)宮田小文法師が富岡鉄斎、京都の有識者と協力の元、
西行庵を再興し、母屋に浄明庵(大徳寺真珠庵の下舎)と、
離れに皆如庵(久我家平野別邸より)が移築され、現在に至っています。

           
                    西行庵

    願はくは花の下にて春死なむ
         その如月の望月のこ
ろ  (続古今集)

有名な西行の歌ですが、いつ頃の作かはわかりません。
「西行物語」(鎌倉時代)は晩年東山の双林寺に庵住していた時の作としています。
西行の入寂は、文治6年(1190年)2月16日、
陰暦の2月中旬は丁度桜の花がまっ盛りでした。

西行庵では毎年3月半ばに西行忌茶会が催され、遺徳をしのんでいます。
平成26年度は第130回を迎え、3月14日と15日に行われました。

朝9時の席入なので待合で待っていると、ご案内があり、
期待に胸をふくらませて浄明庵濃茶席へ入りました。
殿方が一人いらして、その方にお正客をお願いしてスムースに始まりました。
(あとで、正客かもしれないと覚悟されていたと伺いました・・感謝です!)

           
                  奥に見えるのが西行堂

床には「富士見西行之図」。
左上に富士の山、右下に杖と笠が画かれ、西行法師をあらわしています。
このような表現の仕方があったなんて!
とても洒落ていて、各人の西行像を頭の中で想い描くことができますね。
私は、崇徳院の白峯御陵を訪れた時の西行さんを思いました。

掛物の前には献花、献香、献茶がされていました。

    仏には桜の花をたてまつれ
        我がのちの世を人とぶらはば  
(千載集)

  (仏には桜の花をお供えしてください。
   私が成仏した後の冥福を、祈ってくださるのなら・・)

花はモチロン桜、青磁鳳凰耳花器に生けられています。
白磁香炉に五角形の雲母が乗せられ、香銘は?不明です・・・。
献茶は、小文法師好・桜地紋天目茶碗に茶が点てられ、
朱天目台に乗っていました。
遠忌なので、釈迦誕生を祝う花まつりのように華やかでした。

          

           

華やかと言えば、「貴婦人と一角獣」のタペストリーが棚の横に
掛けられていて目を惹きました。
これは「一角獣棚」という、御亭主の花輪嘉純氏(西行庵茶道円位流)が
お好みの棚に添っているものとか・・・。

円位流のお点前が珍しく、魅入っていると、あっという間に濃茶が点てられ、
熱々を3名で頂戴しました。
この時の所作でお正客さまが藪内流で、八坂神社の関係者とわかりました。
藪内流の出し帛紗(?)をそのままお借りして濃茶をたっぷり味わいました。
茶碗は御本、定家卿詠歌の次のような歌銘(小堀宗慶箱)があります。

      霞立つ峰の桜の朝ぼらけ
            紅くくる天の川浪


また桜の登場ですが、今、高麗茶碗に興味津々なので嬉しい出会いでした。
御本の赤味を帯びた斑紋を桜の朝ぼらけに見立てたのでしょうか。
替茶碗は黒楽、銘「古今」(長入造)です。

濃茶は慶雲(奥西緑芳園詰)、
主菓子はきんとん、中が桜餡と白餡、外のきんとんは濃いあずき色、
菓子銘は暁之櫻、柏家光之製です。

客11名が濃茶を飲み終ったころ、鶯が・・・
「ホウ・・ホウ・・ホケキョウ(法華経)」
とても好いタイミングで、上手な鳴き声だったので
「お上手ですね」と褒めると、けなげにも何度も聞かせてくれました。


 

           待ち遠しい円山公園の西行桜 (・・・勝手に命名)
                 (2013年4月撮影)          

西行忌のお道具の中からお気に入りを二つ書いておきます。
一つはかわいらしい唐物鶴頸の茶入です。
小文法師旧蔵で、次のような西行詠歌追銘があります。

     皆鶴は澤の氷の鏡にて
          千歳の影をもてはやすらむ


この茶入を真塗梅輪花盆にのせた点前(裏千家流では盆点でしょうか)を
興味深く拝見しました。

もう一つのお気に入りは、砂張桜合わせの蓋置(長野垤志造)、
繊細な作りで、桜のはかない運命を感じさせてくれます。

桜の開花はまだですが、様々な桜の花をたてまつった浄明庵濃茶席でした。


          西行忌茶会-2 皆如庵席へつづく