暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

夕去りの茶事・・・ゆきつきはな  その1

2012年10月03日 | 茶事  京都編
夕去りの茶事へ3人のお客さまをお招きしました。

暑い間は無理もできず茶事を控えていましたが、
9月に入り、次のような手紙をお客さまへ差し上げました。

   京都へ住まいしてから半年が経ちましたが
   なかなか茶事ができずにおりましたところ
   お出まし頂けるとのご返事を賜わり
   嬉しゅうございます

   陽射しもやわらぐ秋の夕べに
   軒かたぶき 雨漏れる灑雪庵にて
   御茶一服差し上げたく
   謹んでご案内申し上げます

   さしたる趣向もございませんが
   ゆきつきはなを愛で 語らうことを楽しみに
   ご来駕のほどお待ち申しております    かしこ

茶事の9月28日、天気を案じていましたが、よく晴れて月の出が楽しみです。

前日にお正客さまより連絡が入り、親戚に不幸があり、
欠席されることになりました。
やむを得ない事情ですので、正客なしの茶事と覚悟を決めました。

次客のSさまより
「急で準備もしておりませんでしたが、
 できるだけご亭主さまがスームズに流れますように努力してみます」
というメールを頂き、とても心強く思いました。

客三名様で準備しておりましたので、
お近くの茶友へお声掛けさせて頂きました。
すると、Pさまから「喜んで伺わせて頂きます」というご返事があり、
これで心置きなく夕去りの茶事に専心できる・・と感謝!でした。

                

15時30分ごろお客様が到着し、いよいよ茶事のスタートです。
急な正客役のSさまとは初顔合わせでした。
詰のYさまとは聖護院献茶式以来で、二度目の御目文字です。
いつも以上に緊張感を感じながら、無言の挨拶を交わしました。

ゆきつきはなを愛でながら・・・先ず「ゆき」ですが、
待合に「灑雪」(大谷泉奏筆)と書かれた色紙を荘りました。
長月に雪は降りませんが、戸の隙間から雪や雨がふり灑ぐ古家なので
「ゆき」を味わっていただければ幸いです・・・。

「はな」は花寄せ。
近所の花屋さんに相談して、お花を揃えました。
オミナエシ、蓼、吾亦紅、あけぼの草、リンドウ、秋明菊、
ススキ、ホトトギス、桔梗、藤袴、水引草、白槿・・・
花が咲き乱れる秋野に遊ぶ趣向です。
Sさまから順に花を生けて戴き、唱和之式のように
花にちなむ和歌を詠じることにしました。

初炭の後、懐石準備の間に重硯と短冊を廻し、和歌を書いて頂きました。
懐石が終わり、主菓子をお出ししてから、盆をまわし、
歌を二度読み上げました。
Sさまが古式のように優雅に朗々と詠ってくださり、まだ耳に残っています。

花の写真とステキな和歌を留めておきます(順不同)。

            
   白木槿   長月に今なお凛と白木槿
             こうありたしと願う夕去り   


 
            

   まさり草(菊)  暁の清らの露に導かれ
               都の夕べにまさり草匂う 


            

   尾花(美草)  無動寺の谷より渡る金の風
               美草ゆすらむ横川への道 


            

   りんどう   木道に野菊りんどう風に揺れ
              初雁渡るウトナイの湖(うみ)

               
                                   

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