暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

夕去りの茶事・・・ゆきつきはな その2

2012年10月04日 | 茶事  京都編
茶事当夜は十三夜でした。
それで、「つき」をどのようにお見せしたらよいかしら・・・
あれこれ考えるのがとても楽しかったです。

主菓子は「月兎」、一善や製です。
Pさまと左京区カフェ探検の途中で寄って、「月兎」に会いました。
一善やは「京の食文化を受け継ぐ洋菓子」づくりを目指していて、
「月兎」は甘さ控えめクリーミィなチーズケーキです。
ぽっちゃりとした姿や尻尾がユーモラスで、しかも美味しいです。
試食した時に「抹茶にきっと合う」と、これに決めました!

              
              (左端が「月兎」・・試食のときの写真です)

晴れてよし、降ってよしということで、
晴れたら、中立で月をちらっと見て頂こうと思いました。
懐石の合間に外へ出て月を探すと
灑雪庵の屋根の向こうに満月に近い月が出ています。
雲もなく煌々と輝く月、吸い込まれていくような清らかさでした。

「玄関があいておりますので、中立の時にどうぞ月をお楽しみください。
 迎え付けは手燭交換にてお願いいたします」

後座は蝋燭の明かりだけとなりました。
花を少し移動し、富岡鉄斎の色紙を表装した軸を掛けました。
墨絵は竹(蓮かも?)の画、色絵は菊の画です。
小振りなので、煎茶の掛物かもしれません・・・。

              

灯火の元、濃茶点前に集中しました。
静かに濃茶を点てる所作をしていると、
蝋燭に照らし出された影がゆらめき、いっしょに袱紗さばきをしています。
穏やかな明かりの中、何とも言えない幸せを感じながら、濃茶を練りました。
薫り立つお茶をお出しして服加減を尋ねる緊張の一瞬・・・、
濃茶は「錦上の昔」、柳桜園詰です。

茶碗は、遠州七窯の一つ、志戸呂焼です。
古帛紗は、茶名拝受の折に頂戴した「石畳宝尽緞子」をお出ししました。
続いて薄茶になりましたが、ここで大失敗・・・ 
無い知恵をしぼり、何とか切り抜けましたが、あとはご想像くださいまし。

おやさしいお客さま方は何ごともない様子で薄茶を喫みながら
楽しく歓談してくださいました。

さて、雨だったら・・・と、茶入は小堀遠州が古歌を引いて
「廣澤」と名付けた瀬戸金華山窯・廣澤(写)です。

     廣澤の池の面に身をなして
        見る人も無き秋の夜の月

茶入の蓋裏に銀箔が張られていて、「月」を表わしています。

やんごとなき方々は月であっても見上げることはなさらず、
水面に映る月を見て楽しんだそうです。
広沢池や大沢池はいにしえの大宮人の観月の地でしたが、
門蹟寺院・大覚寺では中秋の名月の頃に大沢池に舟を浮かべて
池に映る月を愛でる行事が今も行われています。

              

茶杓は、銘「千代の古道(ふるみち)」誠堂和尚作です。
千代の古道は北嵯峨へ遊行の折に平安貴族が通った道で、
平安京以前からあったとか、いつか歩いてみたい古道です。

最後の月は、棗の蒔絵「雪月花」の三日月、中村孝也造でした。

こうして、お客様と共にゆきつきはなを愛で、親しく語り合い、
時には助けて頂きながら、最後の挨拶となりました。

お客さまをお見送りし家へ戻ってから、もう一度月を観ました。
太田垣蓮月の歌を思い出しながら・・・

      野に山にうかれうかれて帰るさを
         寝屋まで送る秋の夜の月    蓮月


                                


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