暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

茂庵の月釜へ

2012年10月13日 | 献茶式&茶会  京都編
                     吉田山・茂庵の月釜

10月6日(土)、茶友Yさんが灑雪庵を訪ねてくれました。
今日庵で行われた秋期講習会修了後に寄ってくださったのです。
「どこへご案内しようかしら?」

先ず、我が家・灑雪庵でお茶を一服と思いました。
ちょうど前日が自主稽古で、竹台子が出ていたので
行之行・台子点前でお茶を差し上げました。

「講習会(行之行と四ヶ伝)で、見飽きているかもしれませんが、
 行之行・台子点前にて一服差し上げます。
 気が付いた点をご教授頂ければ幸いです」
すると
「ちょうど行之行の復習になって好かったです」
と言ってくださり、いろいろ疑問の箇所を教えて頂いたり、
意見交換したり、小さな研究会のようでした。
濃茶は「春日」(東京一保堂詰)、菓子は御倉屋製です。

              
                     御倉屋の菓子

ランチは京大の楽友会館へ、午後は「茂庵」の月釜へお連れしました。
「茂庵」は、左京区吉田山の山頂にあるカフェですが、
茶室2棟があり、第一土曜日(変更あり)に月釜が掛けられます。

茂庵は、大正時代に数奇者・谷川茂次郎(1864―1940)によって造られました。
大阪で新聞用紙を扱う運輸業を興して成功した茂次郎は、
のちに裏千家に入門し、本格的に茶道に親しむようになりました。
裏千家を後援し、老分も務めています。
神楽岡(吉田山)の山頂に茶室八席、月見台、楼閣のある広大な茶苑を築き、
たびたび茶会を催し、茶を楽しんだそうです。

              
                      茂庵の田舎席へ

茂次郎の没後、茶苑は数十年間、封鎖されていましたが、
当時の食堂棟と茶室2棟(清閑亭と田舎席)が現存しています。
食堂棟は、茂次郎の雅号から「茂庵」と名づけられ、カフェとして盛業中です。

十月の月釜は風炉の最後の月なので、
月見台のある田舎席で行われていました。
炉の時期は清閑亭になるそうです。

襖が取り払われ、月見台を渡ってくる風が気持ちの良い茶席でした。
この茶室(6畳)は床がなく、風炉先に板床が設えてあり、
「清風明月」の軸が懸けられていました。
月はどの辺から上ってくるのかしら? 
東山を眺めると、月見台の向こうに如意ヶ岳の大文字が少し見えます。

              
                      田舎席の月見台
流儀は藪内流です。
「好い機会なので、お流儀の茶の飲み方や拝見を教えてください」とYさん。
足の運びや袱紗捌きも違いますが、茶碗や拝見は縁外、帛紗にのせるなど
扱いがとても丁寧で優雅でした。
紫野源水製の「まさり草」(菊)というお菓子がとても美味しく、
ご亭主ご自作の茶碗で薄茶を頂戴しました。

月釜のあと、神楽岡にある黎明教会資料研修館の「琳派美術展」へ。
9月3日~10月21日まで開催中で、
光悦書の「色紙藤原家隆」や蒔絵「萩撫子文箱」、
宗達画の「蓮池白鷺図」、光琳の「光琳菊の扇面」や「蜻蛉重香合」、
乾山の銹絵陶器など、見ごたえがありました
小さいですが、優品の多い美術館で、しかも無料です。
静かな美術館を貸し切って、ゆっくりお話しながら鑑賞しました。

「8日の茶会のために柳桜園で美味しい抹茶を買って帰りたい」
というYさんをバス停留所で見送りました。
お忙しいのに寄ってくださってありがとう!
またどうぞいらしてください。