暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

如月の茶事へ招かれて (3)

2012年02月25日 | 思い出の茶事
銅鑼の音色に気を引き締め、後座の席入です。

躙り口で覗うと、正面に花が浮かんでいます。
近づくと、福寿草が三つ、今大地から目覚めたように顔を出していました。
さきたま古墳の一つ、稲荷山近くに住むご友人からの早春の贈物です。

花入は信楽の蹲(うずくまる)、大きめの形といい、土の肌合いといい、
健気な福寿草にお似合いでした。
作者は杉本貞光さん、名前と顔が一致する数少ないお一人です。

点前座にまわると、高取の水指に仕覆を着た茶入(古瀬戸肩衝)が荘られ、
湯相もよく、はや濃茶が喫みたくなりました。
座が鎮まり、点前がはじまりました。
長年稽古を積まれてきたご亭主は春風駘蕩の風情で、濃茶を点ててくださいました。

とても美味しゅうございました。・・・が、茶銘を失念しました。
たしか柳桜園の・・・うーん! 思い出したら追記しますね。
前席で頂いた練きり「鶯」は塩瀬総本家製ですが、
林和靖の子孫が日本へ渡り、奈良で塩瀬饅頭の製法を伝えたというお話があり、
興味深く拝聴しました。
茶碗は今高麗の井戸茶碗、銘は「忘れ水」です。

後炭になり、炭手前で苦労した後なので、しっかり拝見させて頂きました。
炭斗が初炭と違っていて、唐物かしら?
釜が浄められ、濡れ釜の風情が一段と鉄肌の美しさを惹きたてています。

後炭が終わり、少しほっとして座が賑やかになり、
談笑しながら薄茶を二服、趣きの違う茶碗で頂きました。
ご亭主にご自服をして頂きたくって、お勧めしました。
干菓子も懐紙にとって差し上げ、自服前にとりわけ賞味して頂きました。
「自分で言うのもなんですが、とても美味しかったです!」
・・・お勧めして好かった。

              

ご亭主様の思い出が詰まったお道具を愉しみつつ拝見しました。
清々しい茶杓だけ、ご披露させていただきますね。
濃茶の茶杓は無節の白木でした。

東大寺二月堂お水取りの日、厳しい行を修めた練行衆は、
牛玉箱をくくりつけた牛玉杖を手にし、童子らの松明に照らされて、
満行の下堂をします。
牛玉杖は柳、それを削った茶杓を東大寺元管長より譲られたそうです。

柳の茶杓は、「素」を連想する、神々しいものでした。
銘は「好日」です。

こうして和やかに、如月好日の茶事が終わりました。
・・・正客としてご亭主の御心をしっかり受け止められたかは疑問ですが、
皆さまの温かく、さりげないフォーローに助けられ、
楽しく一座建立できましたことを感謝いたします。

京都への旅立ちの好い思い出になります。 ありがとうございました!
(ご連客さま、またいつか、ご亭主にお願いして、ご一緒したいですね!)
                                   


     荒川の春野に遊ぶうぐいすも 
          明日は何処を指して飛ぶらむ    暁庵
 

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        写真は、「福寿草」と「梅一輪」 (季節の花300提供です)