暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

水無月の茶事 (2)

2011年06月14日 | 茶事
                  (蛍が飛び交う矢指谷戸に咲く紫陽花)
 (つづき)
懐石の後に初炭をしました。
風炉の時期はいつもドキドキしながら釜を上げます。
上げてみて炭が真っ黒なこともありました・・・。
今回は下火を3本入れ、向こう側に丸ぎっちょ2本を入れておきました。
懐石が長くなりましたが、下火が残っていて無事に炭を置くことが出来ました。

              
              
風炉は唐銅の道安(一之瀬宗和造)、
釜は桐文車軸釜、長野珠己さまのご主人・長野新氏の作です。
桃山から江戸時代初期の茶人に好まれた、車軸の形や団扇の文様を
注文して造って頂きました

繊細な総糸目になっていて、
胴の糸目を団扇形に抜いて桐文が格調高く描かれています。
優雅さと粋を感じる、お気に入りの風炉釜です。
やっとやっと今日が初使いです。
長野夫妻はきっと首を長くしてこの日を待っていたことでしょう・・・。

風炉では初炭から濃茶までそれほど時間がありません。
縦に長い車軸釜は熱効率が悪く、湯が沸きにくい形なのです。
早く火が熾って湯が沸くように炭を置かなくてはなりません・・・うーん難しい。

炭斗は松山籠、香合は檜扇貝香合、宗悦の塗りです。
源吉兆庵製の「清水かげ」をお出しし、中立をお願いしました。

              

中立の頃には雨が上がって陽が射してきました。
それで、喚鐘ではなく銅鑼を打って後入りのお知らせをしました。

後座の床には、白い蛍袋をグランブルーの吹き硝子花入へ入れました。
心配していた湯相もほどよく、
幽かな松風を聞きながら濃茶を練りました。
「とても美味しゅうございます」
というお客様さまの声を聞き、安堵しました。
濃茶は伊藤園の万歴の昔です。

お正客さまから水指についてお尋ねがありました。
昨年秋に播州(兵庫県)を訪ねた折、揖保川焼展で購入した水指です。
柔らかな肌色に貫入が美しく、草花文が描かれていて、薊のようにも見えます。
池川みどりさんの作で、銘は「黙座」(もくざ)です。
亡くなった人への祈り、今生きている喜び、一期一会の茶会・・・
そんなことを思いながら水指を荘りました。

                
              
イルカの火入の煙草盆と干菓子を持ち出し、
濃茶に続いて薄茶を差し上げました。
お正客さまと次客さまは、
井上良斎作の 十五世市村羽左衛門追憶「うずまき茶碗」
三客さまとお詰さまは煌めく星空を思わせる藍色の義山茶碗にて
薄茶をお点てしました。
薄茶は茶友からこの日のために頂戴した、近江朝宮抹茶「翠峰」です。
茶碗を代えてもう一服喫んで頂きながら、いつまでも愉しく、
笑声が満ちるひと時でした。

                

茶事終了後待合で、お持ち寄りの香合の披露があり、これも愉しかったです。
Hさんは雫の形がユニークで、露のようなポッツンがかわいらしい香合、
Aさんは青年部でご活躍の頃の思い出深い、漆の艶やかな塗が格調高い丸香合、
Kさんは漆工芸作家さんとの合作だそうで、虹やオーロラを連想する香合、
長野さんは渋いけれどどっしりした力強さがみなぎる、樫の香合、
そして、私のはブータン・タクツァン僧院で購入した登頂記念の一品でした。

また、お会いできますことを楽しみにしています。

     (水無月の茶事(1)へ)              のち