暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

青磁の潤い 白磁の輝き  戸栗美術館

2011年06月20日 | 美術館・博物館
6月19日(日)、戸栗美術館(渋谷区松濤)
「青磁の潤い 白磁の輝き」展へ行ってきました。
讀賣新聞に紹介された記事を読んで以来、「行きたい!」と思っいながら
終了間近になり(6月26日まで開催)、やっと重い腰を上げました。

戸栗美術館は、渋谷の東急文化村の裏、閑静な住宅地の中にありました。
日曜日でしたが、とても空いていて、ゆっくりと拝見できました。

17世紀から18世紀につくられた伊万里が展示され、その構成は、
第一室は青磁(青磁釉(青緑色のガラス質の膜)に覆われた磁器)、
第二室は白磁(白い素地に透明な釉薬を施した磁器)、
第三室は青磁や白磁以外の釉薬(銹釉、瑠璃釉、辰砂釉)を施した磁器でした。

                

                
                
第一室No.1は、読売新聞に紹介された「青磁染付 樹鳥文 葉形三足皿」でした。
伊万里の地で、青磁に染付を融合させる(掛け分ける)という高度な技術が
ほぼ完成された江戸時代17世紀後半の作です。
解説によると、白磁の素地に呉素で絵を書き、その上だけ透明な釉薬を施し、
その他は青磁釉を掛け分けています。

慶長の役で朝鮮半島から日本へ連れてこられた伊万里の陶工たちは
白い素地となる土をさがし出し、長い研鑽の末に、
青磁と染付を融合させるという、新たな美をつくりだしました。
同時に、青磁を愛し、飽くことのなき独自の美を追及する日本人の存在を感じます。

                

第一室No.13の「青磁染付 波文 舟形皿」は、朝茶事に使いたい・・と思いました。
一番のお気に入りは、No.35の「青磁 瓶」(筍形瓶 鍋島)でした。
耳なしのどっしりした下膨らのような形はやすらかな安定感があり、
胴に入った横線(帯)が微妙なアクセントになって、見ていて飽きません。
何度も見たくなり、戻っては「やはりこれ好いな!」

青磁が好きです。気品、柔らかさ、硬さをあわせ持っていて・・・。
そういえば、最初に心惹かれたのは青磁の水指(香炉の転用)でした。
機を逸して、その埋め合わせ(?)に購入した青磁の茶碗、蓋置、建水などが
手元にありますが、どれも気に入っていて、とても役立っています。

茶事で道具の取り合わせがほぼ決まり、
「あと一つ何にしようかしら?」という時に目だたず、
されど独自の美を持つ青磁にすると、ぴしゃりと納まることが多々あります。
「苦しい時の青磁頼み」とか「お助け青磁」と、頼りにしています。
そして、こんなにも心惹かれる青磁のルーツを知りたくなりました。

他にも、光を通す白磁の繊細な美しさに見とれ、
第三室の「銹釉染付 双鶴文 輪花皿」(当初、九谷の吸坂手と言われていたもの)は、
錆釉と銹釉を抜いた白磁(鶴)の対比が素晴らしい逸品でした。
瑠璃色がグランブルーを思い出させる「瑠璃釉 牡丹唐草文 三足香炉」や、
白磁を残してアクセントにした「瑠璃釉 扇面梅花文 三足香炉」も優美です。

                

青磁、瑠璃、銹、辰砂、金銀、多彩な釉薬を組み合わせた磁器があることも
展示品で知り、伊万里・鍋島の魅力ある世界を垣間見た気がしました。
閑静な戸栗美術館へせっせと通おうかしら?

次回の展示は、「伊万里焼の技と粋」~古伊万里で学ぶやきものの”いろは”~
7月3日(日)~9月25日(日)です。

                           

   写真は上から、「戸栗美術館」
             「美術館の陶製ドアノブ」
             「昨年5月、有田陶器市で購入した青磁染付のカップ」
             {昨年5月、大川内山で購入した色絵のカップ」