暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

香りを見る  「香り かぐわしき名宝展」

2011年05月06日 | 美術館・博物館
午後の昼下がり、関西に住む茶友のEさんから電話です。
「東京へ出てきているので 明日どこかへご一緒しませんか?」
東京芸術大学大学美術館で開催中(4月7日-5月29日)の
「香り かぐわしき名宝展」へご一緒しました。

展示会のテーマは「香を見る」です。
どのように香りを見せるのか、展示の構成やレイアウトにも興味津々でした。
展示は、「香りの日本文化」「香道と香りの道具」「絵画の香り」に分けられています。

一番知りたかったのは、六世紀に仏教伝来とともに伝わったという香の歴史と、
香道という日本文化でしょうか。それから香木も・・・。
法隆寺・玉虫厨子の柄香炉を持った「舎利供養図」(模本)は興味深いものでしたが、
名宝展ならば本物を展示して欲しかった・・・と残念です。
伝来当時から仏の供養の基本は香、花、灯(あかり)だったそうですが、
その伝統は我が家でも細々と受け継がれています。

「香を聞く」コーナーがあり、伽羅の香りを聞きました。
伽羅は焚くことによって香りが生じ、白檀は常温で薫ります。
展示品一番のお気に入りは、「白檀香合仏千手観音坐像」(平安~鎌倉時代)。
手のひらに乗る大きさの香合仏は蓋を開けて拝むたびに、
えも言えぬ佳い香りが漂ったことでしょう。

                  

名高い黄熟香「蘭奢待(らんじゃたい)」は模本の展示でしたが、
森鴎外著「興津弥五衛門の遺書」に登場する香木「一木四銘」が展示されていて、
感慨深く拝見しました。
普通、香木は一木一銘で所蔵者が変わっても銘はそのまま引き継がれますが、
「一木四銘」とは一木で四つの異なる銘を持つ伽羅の名品の香木を指します。
四銘とは「蘭(ふじばかま)」「初音」「白菊」「柴船」で、
香銘はいずれも和歌から名づけられています。

組香という香を当てるクイズ(?)があります。
組香の勝負を視覚的にわかるように駒を進める「盤」を使ったりします。
「花笠香」「競馬香(くらべうまこう)」名所香」「矢数香」などの「盤」が
展示されていますが、どうやってこれを使うのかしら?
「競馬香」を録画で拝見できるコーナーがあり、
やっと「盤」を使う組香の世界を垣間見ることができました。

               

一休宗純(1394~1481)の作と伝える、次のような香の十徳があるそうです。
   感格鬼神  清浄身心  
   能除汚穢  能覚睡眠
   静中成友  塵裏倫閑
   多面不厭  寡而為足
   久蔵不朽  常用無障

 (霊魂や神と感応をし、心や身体を清める。 
  けがれを取り除く。 佳く睡眠から目覚める。
  静かの中に真の友を得る。 世俗の繁忙の中に憩いが見つかる。
  多くても厭にならず、少しでも満足する。
  永く保持しても腐らない。 常に用いても害にならない)

思いがけず香の展示会へご一緒し、お互いに深く知り合えたEさん、
  静中成友  塵裏倫閑
嬉しい香(好)日でした。
                                


        写真は上から、「お隣の木香薔薇 (もっこうばら)」
                  「観音石像  江ノ島岩屋洞窟にて」
                  「我が家の苧環(おだまき)」