暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

正午の茶事  藤の咲く頃に (2)

2011年05月10日 | 思い出の茶事
  (つづき)
銅鑼が五つ打たれ、後座の席入りです。
躙り口を開け、正面の床を拝見したとたん
「あらっ!ご亭主様がいらっしゃるみたい・・・」
姫空木と名残りの椿が楚々と生けられていました。

山里棚に備前の水指、優雅な棗が飾られていて、
あとでお尋ねするのが楽しみです。
八寸の頃に煮えがついた湯が十分に練られ、松風を奏でていました。

濃茶点前が始まりました。
帛紗捌きの間合い、茶入や茶杓の清め、
柄杓からこぼれる湯の音、茶筅通しの指先と幽かな響き・・・、
一座の心地好い緊張感が濃茶への期待を高めていきました。
黒楽に映える緑を鑑賞しながら濃茶を頂戴しました。

「お服加減はいかがでしょうか?」
よく練られた濃茶は熱く、香り高く、
まろやかの中にも苦味がアクセントになっていて美味しかったです。
「とても美味しく頂戴しております」
ご亭主の安堵の気持ちが波長のように伝わってきます。

濃茶は青松園の「延齢の昔」、前席の菓子は亀屋万年堂の「遠山」です。
茶入は膳所の丸壺、仕覆は紺地の道元緞子でした。

              

後炭では炉中の炭の流れを鑑賞し、
共に稽古で学んだ輪胴の扱いを所望したり、
薄茶では、一度言ってみたかった
「どうぞ、ご自服を」
スムースにご自服して頂き、嬉しかったです。
気になっていた棗は淡々斎お好みの「霞棗」、山里棚にとてもお似合いでした。
ほっそりした形、溜塗の色艶、優美な霞の蒔絵を楽しみました。

「稽古道具ばかりで・・・」
とご亭主は謙遜されていますが、
全てにご亭主のお心入れとセンスを感じました。
又庵写しの茶室、ご亭主と半東のHさん、心に残る道具組、流れるような点前、
楽しく頼もしい次客のIさんと詰のAさん・・・
いろいろな要素がハーモニーとなって素晴らしい茶事でした!

次客のIさん曰く。
「パーフェクトな茶事でしたね。
 その中でご亭主とお正客さまの気持ちが響きあって、
 いろいろな思いを感じさせられました。
 お二人の喜びが連客へも伝わってきましたよ・・・(アリガトウ)」 

茶事も終わり近くになって、「汲古庵」(きゅうこあん)という庵名について
伺ってみました。
「汲古」は温故知新という意味ですが、さらに調べていると、
「古(いにしえ)をくみて、ながきつなを得たり」
という禅語に出会ったそうです。
意味するところは、
「人との出会いを大切にして、そこから新しい道(人生)を汲み直して歩む」

この禅語が心に入ってきて「汲古庵」と名づけられたのです。
とても素敵なお話でした・・・。

          
      (正午の茶事 藤の咲く頃に(1)へ)        

       写真の「藤の花」は、季節の花300の提供です。