暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

五事式のお客様 

2011年04月19日 | 茶事

     いざけふは 春の山辺に まじりなむ
        暮れなば なげの 花の陰かは      素性法師

平成23年4月17日は五事式でした。

炉の名残りの時期に五事式を・・・と考えたとき
お客様は既に頭の中で決まっていました。
或る「茶事の会」で共に五事式を学んだメンバーをお呼びしたかったのです。

2月になって、「茶事の会」五事式で正客を務めた先輩Yさんへ電話しました。
「どんなにか、貴女からのお招きを待っていたことか・・・」
と言ってくださり、早や胸が一杯になりました。
お正客さまを快諾してくださいました。
次客のMさんと詰のKさんはその時のメンバーであり、
今年の五事式の会で研鑽しているお仲間でもあります。

もう一人、「茶事の会」のメンバーに野田さんがいらしたのですが、
不慮の事故で2年前にお亡くなりになりました。
野田さんは長屋門公園・正午の茶事の折、半東として新米亭主を
支えてくださった、やさしく頼もしい先輩でした。

                    

それで、お客様がもう一人未定でした。
そんな時に思いがけなくNさんからメールが届きました。
「いろいろの会でお人が急に足りませんようでしたら、
 私も精進させていただけないかと・・・」
Nさんのお気持ちがとても嬉しく、
「早速ですが、4月17日の五事式へいらっしゃいませんか?」
とお声掛けしました。

その時はわかりませんでしたが、あとで考えると、
とても不思議なご縁のように思いました。

Nさんは、野田さんが半東をしてくださった長屋門公園・正午の茶事へ
参加されていたのです。
タイミング良く届いたメールといい、
あれこれ考えていくうちにNさんと野田さんがだんだん重なってきました。

野田さんが代わりにNさんとのご縁を導いてくださった・・・と思っています。
Nさんのお話では4月17日は誕生日だったので(オメデトウございます!)、
「そういうこともあるのね・・・」と、すぐに参加を決められたそうです。

                      

東日本大震災で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに
野田さんを偲んで・・・という気持ちが入り混じった茶事となりましたが、
魅力あふれるお客様に支えられて、明るく楽しい五事式でした。
きっと野田さんも席中のどこかで楽しまれたのでは?

廻り花之式では野田さんと一番仲が良かったYさんが経筒に
かわいらしいピンクの椿を入れました。
花台に乗っているその椿を見た瞬間、
この椿の色を野田さんが好きだったことを想い出し、
「野田さんがそこにいるような気がして、一瞬ぞくっとしたの・・・」
と、あとで伺いました。

                   
                             

香は、半東のIさんが香道のように香炉の灰を美しく調えてくださいました。
折据を廻し、春なので花を引いたMさんに香を焚いて頂きました。

ベテラン揃いなので、その場でどのような仕様になっても
さらさらと和やかに応じてくださって、あっ!という間に時は過ぎていきました。
どう書いたらよいかわからないほど、最高に楽しい五事式でした。

半東のIさん曰く、
「お客様が決まった時から、いえ、もっと前から
 このような五事式になることが決められていた」・・・そうです。