暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「花の橘屋」 十五世市村羽左衛門

2009年07月03日 | 茶事
井上良斎が茶碗を製作して偲んだ
十五世市村羽左衛門は大正から戦前にかけての
歌舞伎を代表する役者さんです。
辺りを払うような美貌から「花の橘屋」と呼ばれました。

「お祭り左七」舞台写真の羽左衛門さんは、
目が大きく、すっきりと彫りの深い顔立ちで、
「たちばなや~!」
と声を掛けたいほどイナセです。

1874年(明治7年)11月5日の生まれ。
出生は複雑で、アメリカの軍人と旧福井藩主の娘(庶子)との間に
生まれた私生児という説が有力で、四歳で十四世市村羽左衛門
の養子になっています。
1900年(明治33年)10月に十五世市村羽左衛門を襲名しました。

アメリカでも絶大な人気があったみたいです。
1945年(昭和20年)8月30日、ダグラス・マッカーサーが
厚木飛行場に占領指揮のために降り立った時、同行した
副官フォービアン・パワーズは日本の新聞記者へ開口一番
「羽左衛門さんはどうしていますか?」

時すでに遅く、羽左衛門は終戦間近い1945年(昭和20年)
5月6日に疎開先で亡くなっていました(享年70歳)・・・。

そんな十五世市村羽左衛門を追憶して、井上良斎が
心をこめて製作した「渦」茶碗。 
きっと橘屋の大ファンだったのでしょうね。
歌舞伎大好きの私にとっても「横浜開港150周年を祝う茶事」に
ご縁があってとっても嬉しいです。

茶碗に描かれた渦は
黒船ボーハタン号が浮かんでいる海の渦であり、
開港から現代まで激しく変化していった時代を象徴する
渦のようにも思えてくるのでした・・・。


     (前へ)    (次へ)

写真は1925年(大正14年)7月 東京歌舞伎座『江戸育於祭佐七』(お祭り佐七)。
出典:ウィキペディア(Wikipedia)