万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

訪日中国人観光客増加を素直に喜べない理由

2018年08月22日 15時45分43秒 | 国際政治
観光庁によると、今年は外国人観光客の数が過去最高を記録し、8月中には2000万人を突破する見込みなそうです。その大半は爆買いでも知られた中国人観光客なのですが、この増加、素直に喜べない理由があります。

 NHKのBS1の番組であるワールドウォッチングでは、世界の放送局をピックアップして各国で話題となっているニュースを報じております。CCTV、並びに、上海東方衛視の二局が中国の放送局であり、NHKのホームページでは、前者について「広大な国土に暮らす13億人の国民に、政府・共産党の方針を伝えるための重要なメディアと位置づけられ、国家戦略と密接に連携しながら海外発信も積極的に展開。」と紹介しています。

 先日、この番組において背筋が寒くなったのは、新疆の今を伝える報道です。新疆ウイグル自治区と言えば、200万人ともされるイスラム教徒の住民が強制収容所に連行され、共産主義への‘再教育’が施されているとして、目下、国際社会から問題視されている地域です。中国の弾圧手法はウイグル人の民族性の抹殺という意味でジェノサイドに近く、人権弾圧問題として、国連のみならず、アメリカも批判を強めています。この問題は、ウイグル人の独立問題でもあるのですが、CCTVが伝える新疆とは、驚くことに、中国人観光客が押し寄せる観光地であり、経済的にも潤っているというものなのです。この報道姿勢からしますと、北京政府は、ウイグル人の独立要求など一顧だにせず、自らが実行している過酷な弾圧政策をも隠し、一般の中国国民に対しては、率先して訪れるべき観光地としてアピールしているのです。

 こうした報道に触れますと、日本国を訪れる中国人観光客の増加は、中国政府が、自らの‘支配地’を拡大するために推進している国策である可能性も否定はできないように思えます。ウイグルは、現在、中国によって既にその版図に組み込まれていますが、今日のウイグルは、未来の日本国であるかもしれません。乃ち、中国の戦略は、相手国の独立性を奪いつつ、異文化を観光資源として活かし、かつ、経済的にも自国依存を高めることで身動きがとれないようにする、というものなのかもしれないのです。仮に、日本国もまた、中国の支配を受ける事態に至るならば、日本人に対しても、宗教や思想を含めて徹底的な洗脳が施され、‘私は神や仏の存在を信じています’と話しただけで、強制収容所に送られることでしょう。

 偶然に目にしたTV番組によって、観光客が大量送り込まれる現象の意味を察したのですが、このリスクは、猜疑心による考え過ぎ、あるいは、杞憂に過ぎないのでしょうか。ウイグル人の身に起きた現実があまりに過酷なだけに、否が応でも警戒せずにはいられないのです。

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コメント (4)
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