万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

対北政策に関する米中の共通点―北朝鮮は‘力’しか信じない

2018年08月19日 15時53分29秒 | 国際政治
本日の産経新聞朝刊に、中国が北朝鮮との国境付近において、‘ゴールデンダーツ’のコードネームを付された軍事演習を実施していたとする記事が掲載されておりました(’ゴールデンダーツ’は中国語で’金飛鏢’なので、’金’が標的とも解される…)。その狙いについては不明であり、対北空爆を想定したとする説が有力なようです。同演習の狙いを見極める上で特に重要なポイントとなるのが、その実施時期と場所です。

実施時期は、北朝鮮の金正恩委員長が電撃的に訪中し、中国の習近平国家主席と首脳会談を行った3月25日から凡そ一ヶ月が経過した4月18日から25日の間であり、米中関係を見れば、ポンペオ国務長官が、6月12日の米朝首脳会談を前にして積極的に対北交渉を展開していた時期でもあります。そして、その二日後の4月27日には、南北首脳会談が開かれており、このタイミングからすれば、中国が、北朝鮮が、南北首脳会談、並びに、対米交渉において3月の中朝首脳会談での合意事項を反故にしないよう、軍事的圧力をかけたとも推測されますし、高度な軍事能力を見せつけることで米軍を牽制したとする識者の見解にも頷けます。仮に北朝鮮がアメリカに靡き、一種の‘米朝同盟’が形成されたとしても、中国にはそれを撃破する軍事力が既にあることを誇示したかったのかもしれません。

加えて、演習場所が北部戦区であったことにも、意味があるように思えます。北部戦区といえば、北京に対して必ずしも従順ではなく、ロシアや北朝鮮との繋がりも指摘されてきた元瀋陽軍区を含みます。瀋陽軍を自らを頂点とする指揮命令系統に取り込むことも、習主席が独裁体制を構築するプロセスで断行した人民解放軍再編の狙いともされておりました。同演習にはH6戦略爆撃機も投入されており、北朝鮮の核施設に対する空爆能力を示す必要性を考慮すれば、演習場所が国境で北朝鮮を隔てる北部戦区であるのは当然と言えば当然です。しかしながら、記事によれば、同演習には、中国各地の航空部隊やパイロットが参加したとされ、独自性を維持してきた‘瀋陽軍’が‘解体’されている様子が窺えるのです。となりますと、同演習は、北朝鮮に対して、最早‘瀋陽軍’を頼りにはできない現実を見せつけることも、目的の一つであった可能性もあります。

一方、アメリカのトランプ政権は、北朝鮮に非核化を迫るに際し、前政権が採用してきた‘戦略的忍耐’から方向転換し、軍事制裁をも仄めかすことで米朝首脳会談まで漕ぎ着けています。そして、北朝鮮が非核化への具体的な行動を渋る中、米韓合同演習は中止しても、軍事的圧力を維持しています。米中とも、北朝鮮に対して最も効果的にメッセージを伝える手段が、軍事的威圧であることを熟知しているのです。このことは、首脳会談の場を設け、何らかの合意に達したとしても、北朝鮮に対してはその遵守は期待できないことを意味しています。米中対立が深まる中、‘力’のみしか信じない北朝鮮には、果たして如何なる未来が待ち受けているのでしょうか。

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コメント (2)
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