万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

EUの対日人権条項問題-人権擁護法案の国際版?

2014年05月06日 16時55分45秒 | ヨーロッパ
EU、日本に「人権条項」要求=侵害なら経済連携協定停止(時事通信) - goo ニュース
 日・EU間で進めている経済連携協定(EPA)の交渉において、EU側から「人権条項」の要求があったと報じられています。「人権条項」とは、双方何れかにおいて人権侵害があった場合には、もう一方は、EPAを停止することができるとする条項ですが(EU側は相互性を強調…)、日本側からは反発の声が上がっています。

 詳細が報じられていないために正確なところは分からないのですが、”人権条項”と表現されてはいるものの、EUが共通の価値として掲げる民主主義、基本的自由や権利の尊重、法の支配、少数者の保護などに反する行為全般を指すようです。将来における中国とのFTA交渉への布石との見方がある一方で、日本国内からは、EUから死刑廃止や”慰安婦問題”などで圧力を受けるとの懸念が広がっています。この背景には、人権の尊重は全ての人々の生命、身体、財産…の保護にとって不可欠でありつつも、”人権侵害”の定義は極めて曖昧であり、主観的で一方的な侵害の決めつけが正当な批判としての言論を封じたり、犯罪を助長してしまうという根強い警戒感があります(不当な特権を与える場合も…)。フランス革命が恐怖政治を招いたように、”行き過ぎた人権擁護”、あるいは、人権絶対主義は、時にして他者の人権や自由を侵害し、さらには、民主主義や法の支配さえも踏みにじることもあるからです。日本国内で人権擁護法案が強固な反対を受けている理由は、日本国民の多くが行き過ぎた人権擁護に潜む暴走性や危険性に気が付いているからに他なりません。

 中国の人権問題は、非人道的な犯罪ですので人権尊重を強く求めることは当然ですが、人権保護を実現している日本国の場合には、逆に”行き過ぎた人権擁護”問題を引き起こしかねません。果たしてEUは、対日人権条項は人権擁護法案の国際版ではないか、とする日本国民の不安を払拭することはできるのでしょうか。人権擁護の濫用と真の人権侵害の放置を避けるために、国際社会は、人権の定義や擁護の範囲について、今一度、議論してみるべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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