万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

遺骨問題―北朝鮮は戦後の日本人虐殺をどう説明するのか?

2014年05月31日 15時48分04秒 | アジア
日本は再調査で拉致決着を=国交正常化が最終目標―総連機関紙(時事通信) - goo ニュース
 日朝合意の結果、北朝鮮側が、拉致被害者を含む再調査の着手を表明しながらも、日本国内では、北朝鮮に対する懐疑論が消えたわけではありません。これまで、日本国は、何度となく約束を反故にされ、騙されてきたからです。

 ところで、報じられるところによりますと、先の大戦末期に北朝鮮地域で死亡した3万5千柱とされる日本人の遺骨の収拾・帰還問題も、交渉の議題に挙がったそうです。北朝鮮が実施するとした調査の内容には、遺骨に関するものも含まれているようですが、北朝鮮側は、その死亡原因についてどのように日本国側に説明するのでしょうか。これほど多くの日本人が北朝鮮の地で絶命したのには(正確な数も分かっていない…)、二つの悲劇があったからとされています。その一つは、昨年、邦訳版が出版された『竹林はるか遠く』でも記述されているように、北方から侵攻してきたソ連軍と抗日組織であった朝鮮人共産軍に多数の日本人が虐殺された悲劇であり、もう一つは、朝鮮の人々に家屋や財産を奪われるなど、終戦後に十分な食料や衣料の供給を受けることができず、飢餓やチフスといった感染病で多くの日本人が命を落とした悲劇です。前者は、言うまでもない直接的な虐殺ですが、後者もまた、民間人の保護義務を怠り、日本人のみを対象に劣悪な状況で死に至らしめたことにおいて、虐殺行為に他なりません。当時の国際法(陸戦法規慣例条約)でも、占領地においては、個人の生命等を尊重し、私有財産を没収したり(第46条)、掠奪することは厳禁されていました(第47条)。20世紀の最大悲劇の一つとされるウクライナのホロドモールも、ソ連邦による飢餓放置型の虐殺事件です。

 今回の合意での北朝鮮の最終目的は、日朝平壌宣言に基づいて国交を正常化し、日本国から多額の経済支援を獲得することにあるそうですが(1965年の日韓請求権協定において、日本国政府は、既に韓国政府に対して北朝鮮を含めた支援金を支払っている…)、北朝鮮こそ、拉致被害を含めて、日本国と日本国民に対して謝罪と償いを行う立場にあります。北朝鮮は、遺骨ビジネスを目論むことで、自らの過去の蛮行を白日の下に晒すことになったと思うのです。

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コメント (4)
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